親の歩き方が変わった、薬の飲み忘れが増えた、ひとりでの買い物が難しそうだ。そんな変化に気づいても、独身の子が仕事や自分の生活を抱えながら、何から始めればよいか迷うのは自然なことです。
この記事では、親の介護が必要かもしれないと感じた最初の1週間に、独身の子がやることを日ごとの手順に整理します。緊急の症状がある場合は予定表より医療機関や救急への相談を優先し、落ち着いている場合は相談先・記録・申請準備を順番に進めます。
この記事の要点
- 最初に「何が、いつから、どの程度」起きているかを事実として記録する。
- 介護保険の申請は市区町村の窓口へ相談し、地域包括支援センターにもつなぐ。
- 要介護認定は申請だけで決まらず、訪問調査や主治医意見書などの手続きがある。
- 独身の子が一人で抱え込まず、できること・できないことを早めに分ける。
まず確認すること:緊急か、相談を始める段階か
介護の準備を始める前に、今すぐ医療的な対応が必要かを確認します。意識がもうろうとしている、急な片側のまひやろれつの回りにくさがある、強い胸痛や呼吸困難がある、転倒して動けないといった場合は、介護の手続きより救急要請や医療機関への連絡が先です。
緊急性が判断できないときも、地域の救急相談やかかりつけ医など、地域で案内されている相談先を使います。この記事の1週間計画は、急変ではなく、生活上の困りごとが続いている場合の初動です。

記録するのは評価ではなく事実
「認知症になった」「もう一人では無理」と決めつけるのではなく、生活で起きたことを残します。たとえば「月曜日に玄関の鍵を閉め忘れた」「先週から昼の薬が残っている」「買い物から帰る道が分からなくなった」のように、日時・場面・本人の様子を書きます。
- 食事、水分、排せつ、入浴、着替えの変化
- 転倒、ふらつき、外出や帰宅時の困りごと
- 薬の飲み方、通院、睡眠、気分の変化
- 本人が困っていること、希望していること
1日目:親の状態と自分の余力を並べて書く
初日は、親の変化だけでなく、自分が対応できる時間と距離も書き出します。独身であることは、いつでも対応できることを意味しません。勤務時間、通勤、持病、睡眠、家計、遠距離移動の負担を含めて、現実的な条件を見える化します。
| 書く項目 | 例 | 確認する理由 |
|---|---|---|
| 親の困りごと | 買い物、服薬、入浴、通院 | 相談時に具体的に伝えるため |
| 頻度と時期 | 週3回、先月から | 変化の速さを確認するため |
| 自分の条件 | 平日は19時まで勤務 | できない支援を先に明確にするため |
| 頼れそうな人 | 近所の親族、主治医、友人 | 一人に集中させないため |
親に聞くときは、できていないことを責める質問ではなく、「最近、困ることはある?」「通院や薬で手伝ってほしいことはある?」のように始めます。本人の意思を確認しながら、勝手に財産や生活を管理しないことも大切です。
2日目:最初の相談先を決めて電話する
相談先に迷ったら、親が住む地域の地域包括支援センターを候補にします。地域包括支援センターは市区町村が設置する高齢者の総合相談窓口で、介護や生活上の困りごとを聞き、必要な支援につなぎます。住所によって担当が異なるため、市区町村の公式サイトや役所の案内で確認します。
介護保険の申請そのものは、市区町村の介護保険担当窓口で案内されます。地域包括支援センターに相談してから窓口につないでもらう方法もあります。電話では次のように伝えると、話が進みやすくなります。

電話で伝えるメモ
- 親の氏名、年齢、住んでいる市区町村
- 困りごとが始まった時期と具体的な出来事
- 転倒や服薬など、急いで確認したいこと
- 同居か別居か、自分が行ける曜日と時間
- 介護保険の申請や利用できる支援を知りたいこと
相談は、要介護認定が下りると決まってからでなければできないものではありません。認定前に使える地域の支援や、今後の手続きについて案内を受けられる場合もあるため、早めに現状を伝えます。
3日目:相談と申請を分けて準備する
「相談すること」と「要介護認定を申請すること」は同じではありません。相談では困りごとを伝えて適切な窓口や支援を確認します。申請では、市区町村に要介護・要支援認定を求め、その後に訪問調査や主治医意見書などの手続きが進みます。
| 段階 | 主な内容 | 準備すること |
|---|---|---|
| 相談 | 困りごと、生活状況、希望を伝える | 出来事の記録、親の住所、連絡先 |
| 申請 | 市区町村の窓口で認定を申請 | 窓口が案内する申請書類や保険情報 |
| 認定調査 | 調査員が心身の状態や生活を確認 | 普段の状態を具体的に伝えるメモ |
| 主治医意見書 | 主治医の意見が審査資料になる | 主治医・通院先・薬の情報 |
| ケアプラン | 必要なサービスや生活の目標を検討 | 本人の希望と家族の対応可能範囲 |
必要書類や受付方法は自治体によって異なります。持ち物を自己判断でそろえ切ろうとせず、電話で確認した内容を日時・担当部署・次の行動と一緒に記録します。

4日目:保険・医療・緊急連絡先を一つにまとめる
介護の相談では、保険情報だけでなく、通院先、薬、アレルギー、緊急連絡先が役に立ちます。原本を持ち歩くのではなく、保管場所を決め、必要な範囲でコピーやメモを用意します。個人情報なので、共有する相手と方法を親と確認してください。

共有する情報の範囲を決める
- 介護保険被保険者証など、自治体から案内された情報
- かかりつけ医、診療科、通院日、薬局と薬の名前
- 緊急時に連絡する親族や近隣の人
- 鍵の場所、ペット、食事制限など訪問時の注意
お金や通帳、印鑑の管理は、親の意思と家族の役割を確認しながら進めます。家族だから自由に扱えると考えず、必要なら自治体の権利擁護相談や専門職に相談します。
5日目:訪問調査と医師への説明に備える
認定調査や医療機関で、親がその場だけ頑張って普段よりよく見えることがあります。できないことを強調するのではなく、普段の状態を具体的に伝えるのがポイントです。調査の前に、日常生活で手助けが必要な場面を短いメモにします。
- 一人でできること、声かけがあればできること、できないこと
- 転倒や外出時の迷いなど、頻度と直近の事例
- 薬、食事、入浴、排せつ、睡眠の困りごと
- 本人が嫌がる支援と、受け入れやすい方法
認定結果や利用できるサービスをここで断定することはできません。調査や審査の結果は、自治体の手続きと本人の状態によって決まります。困りごとを正確に伝え、案内された次の手続きを確認します。
6日目:役割を「できること・外部に頼むこと」に分ける
独身の子がすべての送迎、買い物、見守り、手続きを担う計画は続きにくいものです。親族が少ない場合も、介護サービス、医療機関、地域包括支援センターなどと役割を分けます。頼ることは、親を見捨てることではありません。

| 役割 | 決め方の例 |
|---|---|
| 毎日の見守り | 訪問・電話・サービスの組み合わせを相談 |
| 通院 | 付き添い可能日と医療機関の支援を確認 |
| 買い物・食事 | 宅配、配食、家事支援などの候補を聞く |
| 手続きの連絡 | 連絡担当を一人決め、記録を共有 |
| 仕事との調整 | 勤務先の制度を確認し、無理な約束をしない |
「毎日行く」といった気持ちだけの約束ではなく、「火曜の夜に電話する」「月1回は同行する」のように具体化します。対応できない時間帯も伝えておくと、急な呼び出しが一人に集中しにくくなります。
7日目:生活の安全と、次の1週間を整える
最後に、家の中で転びやすい場所、食事、薬の置き方、連絡手段を確認します。家具を大きく動かしたり、薬を一方的に管理したりするのではなく、本人に相談しながら小さく変えます。

- 廊下や浴室の足元、照明、段差を確認する
- 食事や水分が取れているかを確認する
- 薬の保管と飲み忘れが起きる時間帯を記録する
- 電話、緊急連絡先、鍵の扱いを本人と確認する
1週間で解決しなくても構いません。次の週に「相談先からの返答」「申請の進み具合」「親の変化」「自分の負担」を確認する予定をカレンダーに置きます。

独身の子が抱え込まないための線引き
親のために動きたい気持ちがあっても、自分の仕事、健康、睡眠、住まいを失うほどの対応は続きません。できないことを伝え、支援者に相談することも介護の準備です。

次のような線引きを先に決めておくと、急な依頼に流されにくくなります。
- 平日に対応できる時間と、対応できない時間
- 毎月出せる交通費や立て替え額の上限
- 自分だけで判断せず、相談先へ連絡する条件
- 怒鳴られる、危険な運転をするなど、距離を置くべき状況
親子だけで解決できない問題はあります。地域包括支援センターや市区町村の窓口に、今の状態と自分の限界をそのまま伝えてください。
まとめ:最初の1週間は、抱えるのではなくつなぐ期間
親の介護が必要になったかもしれないとき、独身の子が最初から全てを引き受ける必要はありません。急変の確認、事実の記録、相談先への連絡、申請準備、役割分担を一つずつ進めます。
介護保険の認定や利用できる支援は、自治体の手続きと本人の状態によって決まります。この記事の手順を目安にしながら、親の住所地の公式案内で必要書類・窓口・受付方法を確認してください。
公的な確認先
最初の一週間は、連絡先と困りごとを一枚にまとめる
親の介護が必要になったときは、本人の体調と希望を確認し、地域包括支援センター、かかりつけ医、勤務先などの連絡先を一枚にまとめます。家の中で困っている動作や、服薬・食事の状況をメモしておくと、相談先へ具体的に伝えられます。介護保険や見守りの本・用品は、地域の支援と組み合わせて不足を補うものとして選びましょう。
