70歳を過ぎてからも働きたいと思ったとき、「求人はあるのか」「体力が続くか」「年金と収入の関係はどうなるか」と迷う人は少なくありません。年齢だけで仕事が決まるわけではなく、勤務日数、時間、通勤、仕事内容を自分の生活に合わせて選ぶ必要があります。
この記事では、70歳以上で探しやすい仕事の例を、職種のランキングではなく負担と条件の見方で整理します。高年齢者雇用安定法の制度と個別求人の採用条件は別物なので、制度があるから必ず働けるとは考えず、応募先ごとに確認します。
※年金、税金、健康状態、雇用保険の扱いは個人の状況で変わります。重要な判断は、年金事務所、ハローワーク、医療機関などの公的・専門窓口へ確認してください。
70歳以上の求人を探す前に知っておきたいこと
厚生労働省は、65歳までの雇用確保を企業の義務、70歳までの就業確保を企業の努力義務として案内しています。70歳までの就業確保措置には、定年の引き上げ、定年廃止、継続雇用、業務委託など複数の形があります。
これは、すべての企業が70歳以上の人を新しく採用する義務があるという意味ではありません。定年後の継続雇用制度がある会社でも、対象者、勤務日数、仕事内容、賃金は就業規則や個別契約で変わります。新しく探す場合は、制度の説明と求人票を分けて読みます。

70歳以上で候補になりやすい仕事の考え方
| 仕事の例 | 確認したい負担 | 向いている条件の例 |
|---|---|---|
| 施設・マンション管理 | 巡回、階段、夜勤、緊急対応 | 落ち着いて確認作業ができる |
| 清掃 | 立ち姿勢、しゃがむ動作、洗剤 | 短時間勤務や担当範囲が明確 |
| 受付・案内 | 立ち時間、接客、パソコン入力 | 説明や人とのやりとりが得意 |
| 軽作業・品出し | 持ち上げ、歩行、時間帯 | 重量物の上限が明確 |
| 事務補助・経験職 | 画面作業、納期、責任範囲 | 経験を活かし勤務時間を調整 |
「70歳以上でもできる仕事」を一括りにせず、作業を分解して見ます。清掃でも、屋内の短時間清掃と広い施設の巡回では負担が違います。管理でも、座って受付する仕事と夜間の緊急対応がある仕事では確認項目が変わります。
求人を見つけたら、仕事内容を一日の流れに置き換えます。出勤してから更衣、移動、作業、休憩、片付けまで、どこで立ち、どこで歩き、何を持つのかを確認します。勤務時間が短くても、通勤と着替えを含めると負担が大きくなることがあります。
屋外の仕事は季節によって条件が変わります。夏の暑さ、冬の路面、雨の日の移動、日陰の少なさなどを面接で聞きます。屋内でも空調、照明、床の滑りやすさ、休憩場所が重要です。「できるか」だけでなく「安全に繰り返せるか」を基準にします。

求人票で見るべき7つの条件
- 勤務日数と1日の時間:週何日、休憩を含め何時間か
- 勤務時間帯:早朝、夜間、交代制、冬季の通勤があるか
- 仕事内容:巡回、清掃、電話、パソコン、荷物の扱い
- 重さと移動:持ち上げる重量、階段、屋外移動の有無
- 雇用形態:雇用契約か業務委託か、更新条件は何か
- 賃金と支払い:時給、交通費、固定手当、給与締め日
- 休みと代替要員:通院や家族の予定で休むときの手続き
求人票に「シニア歓迎」とあっても、健康状態や経験を確認しないという意味ではありません。応募前に仕事内容の詳細を聞き、面接では「何時間なら継続できるか」「避けたい動作は何か」を具体的に伝えます。できることを大きく見せるより、長く続けられる範囲を共有するほうが、入社後のミスマッチを抑えやすくなります。
面接で聞いてよい質問
- 一日の作業の順番と、最も忙しい時間帯
- 重い物や階段、屋外作業があるか
- 休憩の取り方と、体調不良時の連絡方法
- 同じ仕事を担当する人数と、代替要員の有無
- 契約更新の基準と、勤務時間を見直せる時期
年齢を理由に遠慮して質問を控える必要はありません。自分が安全に働くための確認として、聞いた内容をメモします。回答が求人票と違う場合は、その場で「契約書にはどのように記載されますか」と確認し、採用後に条件が変わらないようにします。

健康面で確かめること:できる仕事を医療者と整理する
仕事探しでは、病名だけで応募可否を決める必要はありません。歩く距離、立ち続けられる時間、重い物を扱えるか、暑さや寒さに対応できるか、休憩で回復できるかという仕事の動作と体調の関係を整理します。
治療中の病気がある、薬の眠気が気になる、転倒が心配、疲労が翌日まで残るといった場合は、主治医に仕事内容を伝えて相談します。医療者が求人を選ぶわけではありませんが、避けたほうがよい動作や休憩の考え方を確認する材料になります。
健康面の確認は、採用されるために弱点を申告する作業ではありません。仕事を安全に続けるために、必要な配慮を言葉にする作業です。通院日、服薬の時間、休憩の取り方を伝える必要がある場合は、採用担当者にどこまで共有すればよいかを相談します。
家族に頼れるかどうかも、勤務条件の一部として考えます。急な受診や天候による交通の乱れがあったときの連絡方法を決めておくと、無理をして出勤する判断を減らせます。
最初は短時間で試す
長く働きたいからこそ、最初から勤務日数を増やしすぎない方法があります。週の勤務日数、1日の時間、通勤時間を分けて考え、試用期間や更新時に負担を振り返ります。疲労、痛み、睡眠、食欲などを簡単に記録しておくと、感覚だけで無理を続けにくくなります。

ハローワークとシルバー人材センターの違い
ハローワーク
ハローワークでは、雇用契約を結ぶ求人を探し、応募条件や紹介の手続きを相談できます。地域の窓口によって高年齢者向けの相談や求人の扱いが異なるため、年齢、希望勤務時間、経験、通勤範囲を伝えて相談します。
シルバー人材センター
シルバー人材センターは、地域の高年齢者に、臨時的・短期的または軽易な仕事の機会を提供する仕組みです。一般の雇用求人と契約や報酬の扱いが同じとは限らないため、仕事の内容、就業日数、配分金、事故時の扱いを入会先で確認します。
どちらが上ということではありません。毎月の収入を安定させたいのか、地域とのつながりや短時間の仕事を重視するのかで、相談先が変わります。
相談に行く前に、希望する地域、勤務できる曜日、これまでの経験、避けたい作業をメモしておくと、窓口で話が伝わりやすくなります。求人を紹介されたら、仕事内容と契約の形をその場で確認し、持ち帰って家族や専門窓口に相談しても構いません。
急いで決めず、条件を照らし合わせます。働き始めてからの相談先も確認します。安心して続けるために必要な準備です。無理なく進めましょう。

年金と収入の確認を仕事探しと分けて行う
働きながら年金を受け取る場合、厚生年金に加入する働き方や賃金の水準によって、在職老齢年金の調整が関係することがあります。一方、雇用保険、税金、健康保険の扱いも働き方で変わります。求人の応募前に、年金が必ず減る・増えると断定しないでください。
確認するときは、年金証書やねんきん定期便、給与条件、勤務時間が分かる資料を用意し、年金事務所やねんきんダイヤルなど公式窓口で自分の条件を相談します。記事の制度説明は入口として使い、最終的な金額は個別試算で確認します。
年金の受給額や支給時期が気になる場合も、求人探しと制度確認を同じ日に一人で済ませようとしません。まず求人の勤務条件を紙に書き、次に年金事務所へその条件を伝えて相談します。収入が変わったときの手続き、社会保険への加入、税金の扱いは、雇用形態や勤務時間によって異なります。
また、仕事を始めた後に体調が変わった場合の退職・休業・勤務時間の相談先も確認します。採用担当者、現場責任者、年金の窓口を分けておくと、制度の質問を求人会社だけに任せずに済みます。

応募前のチェックリスト
- 週何日、何時間なら3か月以上続けられそうか
- 避けたい動作、重さ、時間帯を言葉にできるか
- 通勤経路に階段、長い徒歩、早朝の交通がないか
- 休憩場所とトイレ、緊急時の連絡方法があるか
- 雇用契約か業務委託か、更新条件を理解したか
- 年金、税金、保険の確認先を決めたか
面接では「70歳ですが大丈夫ですか」と年齢だけを尋ねるより、「週3日、午前中なら継続できます。階段の昇降と10kgを超える荷物は避けたいです」と伝えるほうが、仕事との相性を判断しやすくなります。応募先にも、実際の一日の流れや代替要員の有無を質問します。

70歳以上の仕事は「収入」だけでなく続けやすさで選ぶ
仕事を選ぶとき、時給や月収だけに注目すると、通勤費、体力の消耗、医療機関へ行く時間、家事との両立を見落とすことがあります。月の収入から交通費や必要な支出を引き、働く時間と疲労を含めて生活に合うかを考えます。
働く目的が収入だけでない人もいます。人と話す機会、生活リズム、経験を活かすこと、地域との接点など、仕事から得たいものを書き出します。そのうえで、短時間の雇用、経験職の再就職、地域の仕事、働かない期間を組み合わせてもかまいません。

70歳以上の求人を探すときは、「採用されるか」だけでなく「続けられるか」を基準にします。公的窓口や医療者に相談し、仕事内容と条件を具体的に確認しながら、自分の生活に合う働き方を少しずつ選んでいきましょう。
