転職したあとに「前の会社のほうがよかった」と感じる人はいます。ただし、転職で後悔する人の割合を、すべての年代や職種に当てはめられる公的な一つの数字はありません。調査対象、離職理由、転職後の期間で結果が変わるため、数字だけで転職の成否を決めないことが大切です。
後悔しやすいのは、仕事内容や給与だけでなく、通勤、勤務時間、人間関係、評価のされ方など、入社前に比較しにくい条件が変わったときです。逆に、転職後に大変な時期があっても、生活やキャリアの目的に近づいている場合があります。
転職で後悔する人の割合は一つに決められない
インターネットには「転職者の何割が後悔する」といった数字がありますが、調査の質問文と対象を確認しないまま比較するのは危険です。「転職直後に不安を感じた人」と「一定期間後も転職を失敗だと思う人」は、同じ後悔ではありません。

| 数字を見るとき | 確認すること | 理由 |
|---|---|---|
| 対象者 | 年代、雇用形態、職種 | 自分と条件が違う可能性がある |
| 時点 | 入社直後か、数か月後か | 慣れによって評価が変わる |
| 質問 | 後悔、不満、不安のどれか | 意味が異なる |
| 回答方法 | 複数回答か、単一回答か | 割合の分母が変わる |
総務省統計局の労働力調査は、過去1年間に離職を経験した転職者の人数を把握していますが、これは転職後の後悔率を示す統計ではありません。数字を紹介する場合は、調査名と質問内容を併記し、一般化しないようにします。
転職後に後悔しやすい5つの理由
後悔の理由は一つとは限りません。入社前に聞いていた条件と実際の仕事が違う、想定より忙しい、相談先がないなど、複数の要因が重なって「戻りたい」と感じることがあります。

- 仕事内容のずれ:求人票と面接で想像した業務と、実際の担当範囲が違う
- 勤務条件のずれ:残業、出社日、休日、通勤時間が想定を上回る
- 人間関係の負担:質問しにくい、指示が変わる、孤立しやすい
- 評価と給与の不透明さ:昇給や評価の基準が分からない
- 生活との不一致:睡眠、家事、通院、家族との時間が崩れる
厚生労働省の調査でも、離職後に後悔した人の理由は経済面や再就職への不安だけに限られません。自分の後悔を「会社が悪い」「自分の選択が悪い」と一括りにせず、どの条件が変わったのかを切り分けます。
転職直後の不安と、長く続く不一致を分ける
新しい職場では、社内用語、システム、仕事の進め方を覚える負担があります。最初の数週間に「向いていない」と感じても、教えてもらえば解消する戸惑いなら、転職の失敗とは限りません。反対に、求人票や労働条件通知書と異なる勤務、健康を損なう長時間労働、相談しても改善しない問題は、早めに別の対応を考えます。

記録は、毎日の気分だけでなく、事実と影響を分けて残します。たとえば「指示が分からない」ではなく、「午前に受けた指示が午後に変更され、締切に間に合わなかった」「質問先が分からず30分作業が止まった」と書きます。事実があれば、上司へ相談するときも、転職活動で次の職場に求める条件を考えるときも使えます。
| 記録する項目 | 書き方の例 | 次の対応 |
|---|---|---|
| 起きたこと | 指示、時間、相手を事実で書く | 確認質問を用意する |
| 影響 | 遅延、睡眠、体調への影響 | 優先度を決める |
| 試したこと | 相談、手順確認、休息 | 改善したか確認する |
| 希望 | 必要な支援や変更 | 相談時に伝える |
一か月後、試用期間の終了前など、振り返る日をあらかじめ決めるのも方法です。毎日結論を出そうとせず、記録を見ながら「改善しているか」「相談できる相手がいるか」「生活が維持できているか」を確認します。
まずは転職前後の条件を表にする
気持ちが強く揺れているときは、前の会社のよかった部分だけを思い出しやすくなります。転職前と現在を同じ項目で並べると、戻りたい理由と、今の職場で改善できる問題が見えてきます。

| 項目 | 転職前 | 現在 | 許容できる範囲 |
|---|---|---|---|
| 手取り・賞与 | 実績を記入 | 実績を記入 | 最低ライン |
| 勤務時間 | 始業・終業 | 実際の時間 | 生活に合わせる |
| 通勤・出社 | 時間と回数 | 時間と回数 | 体力の上限 |
| 仕事内容 | 好きだった作業 | 負担の大きい作業 | 学びたい範囲 |
| 人間関係 | 相談相手 | 相談しやすさ | 必要な支援 |
給与が下がったことが後悔の中心なら、毎月の手取りと固定費を確認します。仕事内容が合わないなら、担当変更や研修で改善できるかを考えます。健康に影響しているなら、我慢を続ける前に産業医や医療機関、相談窓口へつなぎます。

「前の会社に戻りたい」と思ったとき
前の会社に戻ることは、必ずしも失敗の証明ではありません。ただし、退職理由が解消されたか、同じ問題が再発しないか、戻った場合の条件が以前と同じかは確認が必要です。元同僚の印象だけで判断せず、正式な募集と労働条件を確認します。

- 前の会社を辞めた理由は解消されているか
- 再雇用時の役職、給与、勤務時間は確認できるか
- 戻った後に同じ人間関係や業務負担が起きないか
- 現在の会社で改善を相談する余地はあるか
- 第三の会社へ移る場合に必要な条件は何か
「戻りたい」という気持ちが、疲労や睡眠不足のサインであることもあります。退職や再転職を即断する前に、数日だけ事実を記録し、信頼できる人やキャリア相談で整理する方法もあります。
今の職場で改善できることを確認する
後悔の原因が明確なら、退職以外の打ち手を試せる場合があります。上司へ相談するときは「つらい」とだけ伝えず、業務量、期限、時間帯、希望する変更を具体化します。

- 担当業務の優先順位を確認する
- 締切や残業の見込みを調整できるか相談する
- 質問相手や引き継ぎ資料を決める
- 試用期間や評価時期に、仕事内容を再確認する
改善を試しても健康や安全が損なわれる場合は、無理に適応し続ける必要はありません。ハラスメントや賃金、長時間労働など法的な問題が疑われるときは、社内窓口、労働局、専門家など適切な相談先を選びます。
再転職するかを判断する手順
再転職を考えるときは、感情を否定せず、生活を守る準備と並行して進めます。次の順番で整理すると、勢いで退職して収入が途切れるリスクを下げられます。

- 後悔の原因を一つずつ記録し、健康への影響を確認する
- 社内相談や条件調整で改善できるか試す
- 前職への復帰を含め、複数の求人と条件を比べる
- 貯蓄、給付、次の入社時期を確認して退職日を決める
- 退職理由と次の職場で重視する条件を言葉にする
雇用保険の基本手当や再就職手当など、離職時に確認できる制度があります。受給要件や手続きは離職理由や加入期間で異なるため、退職前後にハローワークで確認してください。厚生労働省のジョブ・カードやキャリア相談を使い、これまでの経験と次の希望を整理する方法もあります。
退職を決める前に確認すること
転職を後悔しているときほど、次の求人が見つかる前に退職したくなることがあります。心身の安全が脅かされている場合は早めに相談が必要ですが、急いでいない場合は、生活費と手続きも並行して確認します。給与の締め日、賞与や有給休暇の扱い、健康保険、住民税、雇用保険の手続きをメモしておくと、退職後の不安を減らせます。
- 今すぐ離れる必要がある健康・安全上の問題があるか
- 次の応募先に求める最低条件を3つに絞れているか
- 退職後の生活費と公的給付の相談先を確認したか
- 職場で受け取る書類と返却するものを把握したか
在職中に転職活動をする場合は、現在の勤務先の情報や顧客情報を持ち出さず、応募先に伝える経歴も正確にします。前職へ戻る場合も、新しい会社へ移る場合も、面接では「なぜ辞めたいか」だけでなく、「次はどんな条件なら長く働けるか」を説明できるようにしておくと、同じ後悔を繰り返しにくくなります。
後悔を感じた経験は、次の職場選びに使える情報でもあります。苦しかった条件を責める材料にせず、通勤時間、勤務時間、仕事内容、相談体制などの優先順位に変換しておきましょう。
求人票を保存するときは、掲載日と応募期限も記録します。面接で聞いた内容と労働条件通知書が一致しているかを確認し、分からない点は入社前に質問してください。
前職に戻るか迷うときも、懐かしさだけでなく、現在の生活と将来の希望に合うかを確かめます。
判断を急がず、確認した条件を家族や相談相手にも共有すると、見落としに気づきやすくなります。
相談先の意見をそのまま決定にせず、自分の体調、収入、働きたい条件を基準に最終判断をします。
転職は正解探しではなく、条件を確認しながら選び直す作業です。
自分のペースで、次の一歩を決めましょう。
確認した内容は、後から見返せるように保存します。
焦らず進めてください。
一つずつ確かめれば、判断材料は増やせます。
転職後に一時的な不安があることと、転職が失敗だったことは同じではありません。数字を鵜呑みにせず、転職前後の条件、生活への影響、改善の可能性を確認すれば、自分にとって戻るべきか、残るべきか、別の選択肢を探すべきかを判断しやすくなります。
参考:総務省統計局「転職者の人数」、厚生労働省「離職に関する調査報告書」、厚生労働省「キャリアを見直したい」、厚生労働省「基本手当・再就職手当Q&A」(確認日:2026年9月18日)。制度や統計の定義は、最新の公式情報で確認してください。
