パート先の休憩室で、40代の女性は新しい書類を前に手が止まった。「年収103万円以下なら、扶養控除等申告書はどこまで書けばいいの?」。自分が誰かを扶養している話なのか、自分が家族の扶養に入っている話なのかも、用紙だけでは分かりにくかった。
この申告書は、パートか正社員か、年収が103万円以下かだけで記入欄を決めるものではありません。まず用紙の年分と提出先を確認し、主な給与を受ける勤務先へ提出する書類か、扶養親族等を記載する書類かを分けます。税制の金額は年分で変わるため、国税庁の最新様式と勤務先の案内を優先してください。
最初に知りたい「扶養控除等申告書」の役割
給与所得者の扶養控除等申告書は、給与を受ける人が勤務先へ提出する年末調整・源泉徴収に関係する申告書です。パートであっても、主な給与を受ける勤務先に提出する場合があります。国税庁は、2か所以上から給与を受ける場合、この申告書を提出できる給与支払者は一つと案内しています。
「自分が家族の扶養に入っている」ことと、「自分が扶養親族を申告する」ことは別です。自分に扶養する親族がいなければ、扶養親族の欄が空欄になることはありますが、本人欄や提出先に関する欄まで空欄にするとは限りません。

| 混同しやすい言葉 | 意味 | 確認すること |
|---|---|---|
| 自分が扶養される | 家族側の税や社会保険の判断に関係 | 家族の勤務先・加入先の基準 |
| 扶養親族を申告する | 自分が扶養する親族を記載 | 年齢・所得・生計の要件 |
| 主たる給与 | この申告書を提出した勤務先の給与 | 提出先は原則一つ |
| 年収103万円 | 過去年分で使われた給与収入の目安 | 対象年分の最新基準 |
103万円以下でも、年分を先に確認する
「103万円以下なら税金がかからない」「103万円を超えたら扶養から外れる」という説明は、税の種類、社会保険、家族側の控除、年分によって意味が変わります。申告書の書き方を一つの金額だけで決めると、別の制度と混同します。
国税庁は令和7年度税制改正で、所得税の基礎控除・給与所得控除の見直しや特定親族特別控除の創設を案内しています。また令和8年分の様式や記載例も公開しています。令和7年分と令和8年分で扱いが異なる項目があるため、会社から渡された様式の年分を確認します。

| 確認する数字・条件 | なぜ分けるか | 確認先 |
|---|---|---|
| 給与収入 | 給与所得控除後の所得と同じではない | 給与明細・国税庁 |
| 合計所得金額 | 扶養親族等の要件で使われることがある | 国税庁の年分別案内 |
| 社会保険の収入要件 | 税の扶養とは別の制度 | 勤務先・年金事務所・健康保険者 |
| 家族側の控除 | 自分の申告書だけで決まらない | 家族の勤務先・税務署 |
この記事では、103万円以下であれば必ず誰かの扶養に入れる、あるいは必ず税金がゼロになるとは案内しません。勤務時間、勤務先の数、家族側の条件、社会保険の加入条件を別々に確認してください。
本人が書く欄を上から確認する
手元の用紙を広げたら、いきなり扶養親族欄へ進まず、本人情報と給与の提出先から確認します。様式は年分で変わることがあるため、以下は確認の順番です。実際の記載位置やマイナンバーの扱いは、勤務先の指示と国税庁の記載例に合わせます。

- 申告書の年分と氏名欄を確認する
- 住所、生年月日、個人番号の記載方法を勤務先の案内で確認する
- 主な給与を受ける勤務先に提出するかを決める
- 2か所以上で働く場合は、どこを主たる給与の勤務先にするか担当者へ相談する
- 配偶者、扶養親族、障害者、寡婦、ひとり親、勤労学生など該当する欄を確認する
- 該当しない欄は、勝手に「なし」と書くのか空欄にするのか勤務先へ尋ねる
本人が家族の扶養に入っている場合でも、自分の申告書の本人欄を記載することがあります。扶養されているから申告書が不要、と決めつけないでください。
扶養親族の欄は「自分が扶養する人」がいる場合だけ

扶養親族の欄には、誰でも家族の名前を書けるわけではありません。年齢、合計所得金額、生計を一にしているか、ほかの人が同じ親族を控除対象にしていないかなど、年分ごとの要件があります。
一人暮らしで扶養する親族がいない場合、扶養親族欄に記載する人はいない可能性があります。親と同居しているか、生活費を援助しているかだけで自動的に該当するわけではないため、迷ったら続柄と所得の状況を整理して担当者や税務署へ確認します。
| 状況 | 自分で決めずに確認すること |
|---|---|
| 自分は親の扶養に入っている | 家族側の控除・社会保険の条件と、自分の勤務先への申告 |
| 子や親を援助している | 年齢、所得、生計、ほかの人の申告状況 |
| 同居している家族がいる | 同居だけで要件を満たすか、年分別の基準 |
| 扶養親族がいない | 本人欄と提出先欄まで空欄にしないこと |
パートを掛け持ちする場合の分岐
勤務先が一つなら、その勤務先へ提出する流れを確認します。二つ以上の勤務先から給与を受ける場合は、原則として扶養控除等申告書を提出する主たる給与の勤務先を一つ選び、もう一方は従たる給与として扱われます。

主たる給与の決め方や年末調整、確定申告が必要になるかは収入状況で変わります。二つの勤務先へ同じ申告書を提出する、年収の少ないほうへ必ず出す、といった自己判断は避けます。
- 勤務先ごとの年間給与の見込みを分けて書く
- 申告書を提出する勤務先を一つ決める
- もう一方の勤務先へ提出する書類の名前を確認する
- 年末調整と確定申告の要否を勤務先または税務署へ確認する
税の扶養と社会保険の扶養を混ぜない

税の扶養控除等申告書は、所得税の源泉徴収や年末調整に関係します。一方、健康保険の被扶養者認定や年金の扱いは別の制度です。勤務時間や勤務先の規模など、税の申告書に書かない条件が関係することもあります。
年収103万円以下という検索語だけで、社会保険料が必ず発生しない、家族の健康保険に必ず入れると判断しないでください。勤務先の社会保険担当、家族の健康保険者、年金事務所など、制度ごとの窓口へ確認します。
提出前のチェックリスト

- 用紙の年分は、勤務先から指示された年と一致しているか
- 氏名、住所、生年月日など本人情報に誤りがないか
- 申告書を提出する勤務先は一つになっているか
- 扶養親族を記載する場合、年齢・所得・生計の要件を確認したか
- 個人番号を記載・提示する方法を勤務先へ確認したか
- 103万円を税・社会保険・家族側の条件と混同していないか
- 空欄の扱い、提出期限、訂正方法を担当者へ確認したか
記入後に写しや写真を個人で保管する場合は、個人番号や家族の情報が第三者へ漏れないよう管理します。メールで送るときは、会社が指定した安全な方法を使い、私用の共有サービスへ無断でアップロードしません。
次の一週間で迷いを解消する

- 今日:用紙の年分と提出期限を確認する
- 明日:勤務先が一つか、掛け持ちかを整理する
- 3日目:本人欄と個人番号の扱いを担当者へ確認する
- 4日目:扶養親族の有無と、家族側の申告状況を整理する
- 5日目以降:税の扶養と社会保険の条件を別の窓口へ確認し、提出する
「年収103万円以下だから、この欄だけ書けばよい」と急いで埋めるより、年分と提出先を最初に確定するほうが誤記を減らせます。この記事を見ながら判断がつかない欄に印を付け、勤務先の担当者へまとめて質問してください。
勤務先に聞くときは、質問を具体的にする
申告書の用紙だけを持って「全部教えてください」と聞くと、担当者も状況を把握しにくくなります。年分、勤務先の数、扶養親族の有無、迷っている欄を先に整理すると、確認が短時間で済みます。個人番号を含む書類は、写真を送る前に会社の指定方法を確認しましょう。
| 確認したい場面 | 担当者への質問例 |
|---|---|
| 用紙の年分が不明 | 「この用紙は何年分として記入しますか。記載例はありますか」 |
| 掛け持ちしている | 「主たる給与の勤務先として、こちらへ提出すればよいですか」 |
| 空欄がある | 「該当しない欄は空欄でよいですか。それとも斜線や記載が必要ですか」 |
| 家族の扶養が関係する | 「税の扶養と社会保険の扶養で、別に確認する窓口はどこですか」 |
| 提出後に間違いに気づいた | 「訂正印、再提出、担当部署への連絡のどれが必要ですか」 |
質問の回答が税の制度そのものに及ぶ場合は、勤務先だけで断定せず、国税庁の年分別案内や税務署にも確認します。社会保険の被扶養者認定は健康保険者の判断になるため、税の申告書を提出したことだけで手続きが完了したとは考えないでください。
よくある疑問
パートで年収103万円以下なら申告書はいらない?
年収の見込みだけで不要とは決められません。主な給与の勤務先へ提出する申告書か、勤務先の案内に従う書類かを確認します。
自分が親の扶養に入っている場合、扶養親族欄に親を書く?
自分が扶養されることと、自分が扶養親族を申告することは別です。親を自分の扶養親族として記載できるかは、所得・生計などの要件を確認してください。
令和7年分と令和8年分は同じ書き方?
様式や所得要件などが変わる場合があります。渡された用紙の年分に対応する国税庁の様式・記載例と、勤務先の指示を使います。
申告書の様式、年分別の税制、2か所給与の扱いは、2026年9月18日に国税庁の各種申告書・記載例、給与所得者の扶養控除等の申告、2か所以上から給与をもらっている人の源泉徴収、パートやアルバイトの源泉徴収を確認しました。税や社会保険の適用は年分・勤務先・家族の状況で変わるため、最終的には勤務先、税務署、健康保険者などへ確認してください。
