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保険料、月18,640円。「ひとりなら死亡保障はいらない?」47歳の棚卸し

封筒から保険書類を取り出し、三つの契約と電卓を食卓に並べる手元

日曜の夜、美咲さんは保険会社から届いた「ご契約内容のお知らせ」を、開かないまま食卓の端へ寄せました。夕食を片づけても、白い封筒だけが残っています。

47歳、会社員、ひとり暮らし。給与明細から引かれるものとは別に、口座から毎月18,640円。医療保険、死亡保障、がん特約。二十代のころから足したり勧められたりして、いま何がいくら出るのか、自分でも説明できません。

封筒をようやく開いた美咲さんは、月額欄を指で二度なぞりました。

日曜の夜、三つの保険書類を食卓に並べて保障と保険料を確認する美咲さん

「ひとりなら死亡保障はいらない、って聞きます。もう全部やめてもいいんでしょうか」

目次

最初に聞いたのは、保険の名前ではなかった

橘は封筒を受け取らず、ノートの中央に一本の線を引きました。

橘:「美咲さんがいちばん困るのは、どんなときですか」

美咲:「長く働けなくなることです。入院費より、家賃と生活費が止まらない方が怖いです」

編集長:「では死亡保障はゼロ。ひとりだから、以上」

橘:「早いです。扶養している人がいなくても、葬送費用、残したい相手、連帯債務などは人によって違います。逆に、大きな死亡保障より就業不能時の生活費を優先したい人もいます。まず目的を分けましょう」

美咲さんの手取りは月31万円。家賃9万2,000円を含む生活費は約24万円、預貯金は約620万円。そのうち老後用として分けた420万円には、できれば手をつけたくありません。扶養家族と住宅ローンはなく、守りたいのは病気のときも今の部屋で療養できること。そして体調が戻ったら、働き方を選び直せる余白でした。

夜の食卓で、保険の書類を読みながら顎に手を添えて考える美咲さん

橘が「その420万円を、明日から使えるお金として数えますか」と聞くと、美咲さんはすぐには答えませんでした。老後用の箱を守ることと、今の生活を守ることを、同じ口座残高だけで決めていたからです。保険の見直しは、保険料を削る作業ではなく、手元のお金、会社の制度、保険金の役割を別々の紙へ移す作業から始まります。

三つの契約を、一行ずつ読める形にする

「保険に入っている」では、何も比べられません。保険証券、契約内容のお知らせ、マイページを開き、契約ごとに同じ項目を一行へ並べます。

書き出す項目 確認する場所 美咲さんが止まった点
何のための保障か 商品名ではなく支払事由 医療と収入減を混同していた
いつ・いくら受け取れるか 契約概要、約款、特約 入院日額だけ覚えていた
受け取れない場合 注意喚起情報、免責・不担保 待機期間を確認していなかった
毎月・毎年の負担 保険料、払込期間、更新後保険料 三契約の合計を初めて計算した
やめる・減らす場合 解約返戻金、減額、払済、特約解約 全部解約しかないと思っていた
連絡先と受取人 証券番号、登録情報 以前の住所が一件残っていた

金融庁は、購入前に必要な保障と不明点を検討し、「契約概要」「注意喚起情報」も読むよう案内しています。これは新規契約だけの話ではありません。いま持っている契約を見直すときも、商品名や月額だけでなく、支払事由と不利益になる条件まで戻って確認します。

「入院したら」と「働けなくなったら」を分けて置く

美咲さんは、入院日額が書かれたページを先に開きました。けれど本当に怖いと話していたのは、退院後も仕事へ戻れず、家賃の引落しだけが続く月でした。医療費のための現金、休業中の生活費、亡くなったあとに必要な連絡や費用は、同じ「保険」であっても困る日が違います。

先に置く場面 美咲さんが見るもの 契約書で確認する欄
数日から数週間の治療 窓口の医療費以外に何が残るか 支払事由、日数条件、先進医療・通院の扱い
数か月働けない 家賃と生活費をどこから払うか 就業不能・収入保障の開始条件、待機期間、支払期間
万一の連絡と整理 誰に何を残すか 死亡保障額、受取人、葬送費用や債務との関係

この表に金額を埋める前に、空欄を残して構いません。今の契約がどの場面をカバーしているか分からないこと自体が、問い合わせる理由になります。逆に、一つの保険で全部を埋めようとすると、何のために払っているのかがまた見えなくなります。

月18,640円は、年にするといくらになる?

編集長が電卓を取り出し、「月額なら外食一回半だけど、年額になると顔つきが変わる」と言いました。保険料を下げること自体が目的ではありません。それでも、現在と見直し案の差を年額で見ると、何と交換する判断なのかが分かりやすくなります。

PREMIUM CHECK

保険料の差を、年額で見る

入力した数字は外部へ送信しません。



現在の年間保険料223,680円

見直し案との差・年額106,080円

現在の保険料/手取り6.0%

保険料率の変更、解約返戻金、税、保障の価値は計算に含みません。比率に一律の適正値はありません。

月額9,800円の見直し案なら、差は年106,080円です。ただし、その差額と引き換えに、どの保障が減るのかを読まずに決めてはいけません。安くなった数字は、結論ではなく次の質問です。

年額の差は、まず「生活の余白」として置く

美咲さんの差額は年10万6,080円。これをすぐ老後資金へ回す、と決める必要はありません。休職中に家賃を払うための現金がどれだけ残るか、健康診断や歯科など後回しにしている支出がないか、更新型の契約なら次の更新でどう変わるか。年額は「得をした額」ではなく、保障を変えたあとに何を確かめる余白ができるかを読む数字です。

編集長が「では月8,840円を全部、旅行積立へ」と言うと、橘は首を振りました。「その前に、今の契約を整理してからです」。美咲さんも笑って、差額の行の横に「三か月は普通預金」と書きました。保険を下げるかどうかより、変更後の生活が本当に回るかを見たい、と初めて言葉にできたからです。

民間保険の前に、勤務先と公的保障を確認する

橘:「会社を長く休んだとき、給与と休職制度はどうなりますか」

美咲:「有給の残りは見ています。でも、その先は知りません」

協会けんぽの傷病手当金は、業務外の病気やけがで働けず、連続する3日間を含み4日以上休み、給与を十分受けられないなどの要件を満たす被保険者が対象です。支給期間は、支給開始日から通算1年6か月。金額は標準報酬月額を基に計算されます。加入する健康保険や雇用状況で扱いが異なるため、美咲さんは人事と保険者の両方へ確認することにしました。

医療費には高額療養費制度がありますが、自己負担限度額は年齢や所得区分などで変わり、食事代、差額ベッド代、保険外診療などは対象外です。障害年金にも初診日、保険料納付、障害状態などの要件があります。「制度があるから民間保険は不要」とも、「制度では何も足りない」とも、名前だけでは判断できません。

  • 就業規則の休職期間と給与・見舞金
  • 加入する健康保険の傷病手当金と高額療養費
  • 障害年金の対象になり得る条件
  • 預貯金で生活費を何か月支えられるか
  • 家族以外に頼める連絡先、家事・通院支援
土曜の朝、保険書類のそばで手帳に三つの日付を書く美咲さん

人事に聞くときは「傷病手当金はいくらですか」と一問だけにしません。休職制度が始まる日、給与が止まる日、会社独自の給付があるか、連絡先はどこかを一緒にメモします。健康保険の窓口では、今の加入状況で確認すべき制度と手続きの入口を聞く。美咲さんは電話の前に、聞きたいことを三行にしておくと、契約書の言葉に飲まれずに済むと気づきました。

解約ボタンを押す前に、四つの道を並べる

美咲さんは「継続か、全部解約か」の二択だと思っていました。ところが、契約によっては保障額の減額、不要な特約だけの解約、払済保険への変更などを確認できる場合があります。どの方法が使えるか、返戻金や保障がどう変わるかは契約ごとに異なります。

選択肢 確認すること
今の契約を続ける 更新後の保険料、保障期間、受取人・住所
保障額を減らす 減額後の保障、最低金額、返戻金への影響
特約を整理する 外せる特約、連動して消える保障、再加入条件
新しい契約へ乗り換える 健康状態による加入可否、責任開始日、免責、旧契約を戻せないこと

生命保険文化センターは、乗り換えでは契約年齢の上昇で保険料が高くなる場合や、健康状態によって新契約に入れない場合があると案内しています。新しい契約が成立する前に現在の契約を解約しないこと、短期間の解約では返戻金がないか、ごくわずかな場合があることも確認が必要です。

電話をかける前に、証券の余白へ三行だけ書く

保険証券を整理し相談前の質問を書く美咲さん
証券を整理し、相談前に確認したいことを三行に絞る場面。(イメージ画像)

木曜の昼休み、美咲さんは保険会社の番号を表示したまま、まだ発信できずにいました。聞くことを全部思い出そうとすると、聞き漏らしが怖くなったからです。そこで証券の余白に、「この保障は何のため」「今やめると何がなくなる」「減額か特約だけの整理はできるか」と三行だけ書きました。これなら、商品名を知らなくても会話が始められます。

問い合わせで分からなかった言葉は、その場で決めません。「書面で見たいので、どのページにありますか」と聞いて、契約概要や注意喚起情報の場所を控えます。見直しには、手続きできる期限や、保障が変わる日がある場合もあります。今日中に答えを出すためではなく、次に読む紙を一枚に絞るための電話です。

美咲さんは、死亡保障を残すか減らすかをこの電話では決めませんでした。けれど、がん特約の支払条件、更新時の保険料、解約返戻金の見込みをそれぞれ聞く先が分かりました。迷いが消えたのではなく、「全部わからない」が三つの質問に変わった。保険を棚卸しする最初の成果は、それで十分です。

美咲さんが今週やること

相談の終わりに、美咲さんは「全部やめる」ではなく、三つの日付を手帳に書きました。

土曜の朝、保険書類を重ねて今週確認する三つの日付を手帳へ書く美咲さん
  1. 火曜日:三契約の契約概要・注意喚起情報・最新の解約返戻金をそろえる
  2. 木曜日:人事へ休職期間、給与、団体保険を確認し、健康保険の窓口も控える
  3. 土曜日:契約ごとに「守りたいこと」「受け取れる条件」「年額」「やめたとき」を一行で並べる

「保険を減らす相談だと思っていました。知らないまま払っている状態をやめる相談だったんですね」

相談先を使うなら、ここまで整理してからです。相談料金、取扱保険会社の範囲、現在の契約を残す案も扱うか、契約しない場合の連絡停止方法を最初に聞きます。無料相談という表示だけで選ばず、誰から報酬を得るサービスなのかも確認します。

その場で契約を決める必要はありません。美咲さんが相談で持ち帰りたいのは、おすすめの名前ではなく、「この保障は何の場面のためか」「減らすと何が消えるか」「次に確認する書類は何か」の三つです。答えが急がせるものなら、契約書を持ち帰ってからもう一度、最初の一行表へ戻ります。

保障を整理したあと、必要保障額の考え方を確認する

家族構成や貯蓄、毎月の保険料を見直し、残す保障と外す保障の候補を比べたら、必要保障額の考え方を解説した書籍も確認します。保険料や契約条件は人によって異なるため、申込み前に最新の説明を読み直してください。

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この記事を書いた人

おひとりさまの生活設計を専門にする編集・調査チームです。編集部には、老後・お金、住まい、仕事・副業、転職・婚活、旅・食事、美容・セルフケアの各分野に詳しいスペシャリストが在籍し、それぞれの実務経験や実体験をもとに執筆・確認しています。経験談をそのまま押しつけるのではなく、年齢、収入、住む場所、体力、時間、予算など条件を分け、費用・手間・続けやすさ・失敗しやすい点まで比較できる判断材料に整理します。制度や料金は公式情報と更新履歴を照合し、旅や食事は現地の動線と一人での過ごし方を具体化。調査、論点整理、構成、比較設計、表現・リンクの品質確認を分担し、広告提携の有無と記事の評価軸を分けています。専門家集団として、読者が自分の基準で次の一歩を決められる編集を行います。