37歳・佳奈さん|740万円差だった二部屋が、2万4,000円差になった夜
火曜23時48分。小川佳奈さん(仮・37歳)は、緑と赤茶の物件ファイルを床へ並べた。緑は3,720万円の改修済み住戸。赤茶は2,980万円の未改修住戸。「740万円あれば、好きに直しても安い」。そう思って見積りの空欄を埋めると、10年間の既知支出の差は2万4,000円まで縮んだ。
赤茶の部屋には、設計80万円、工事580万円、工事予備費58万円、今の家賃4か月分44万8,000円、保管と二度の引越し30万円が加わる。緑の部屋にも、購入諸費用、入居前の手直し、家賃が重なる一か月がある。呼び名ではなく、二本の鍵を受け取れる日まで計算すると、値札とは違う比較になった。
「リノベ」と「リフォーム」の看板を、いったん外す
広告で使われるリノベーションとリフォームには、この記事で全物件へ当てはめられる工事範囲の境界を置かない。全面改修と書かれていても、給排水管、下地、断熱、窓、電気容量まで触れたとは限らない。表面を整えた工事でも、自分に必要な設備だけ更新していれば十分な場合がある。
佳奈さん「スケルトンリノベ済みなら、見えない所も新しいですよね」
橘「何を撤去し、どこまで交換したかは工事記録で見ます。共用の縦管や窓まで住戸工事で自由には変えられません」
編集長「名前ではなく、解体前・工事中・完成後の三枚を見るんですね」
改修済みなら仕様書、図面、工事写真、保証書をもらう。購入後に工事するなら現地調査、見積内訳、除外項目、管理規約、承認手順をそろえる。同じキッチン写真へ着地しても、買い手が引き受ける未確認は反対側にある。
改修済みは、完成前の写真を買うつもりで読む
完成した床を剥がして下地を確かめることは難しい。だから、販売図面の「新規交換」だけでなく、解体範囲、配管の材質と交換区間、断熱、床下地、電気配線、工事年月、施工者を記録で追う。給湯器や食洗機は型番と製造年、保証の開始日と名義変更を確認する。
売主の保証があるなら、対象部位、期間、免責、発見時の連絡先、修補の判断者を見る。「アフターサービス付き」という一行より、漏水、建具、設備、内装がそれぞれ何日まで、誰の負担になるかの方が役に立つ。工事写真がない部分は、新品と推定して価格へ足さない。
購入後改修は、見積りの外側に部屋がある
580万円の見積りに、設計監理、解体、廃材、養生、設備、電気、配管、下地、仕上げ、申請、清掃が全部含まれるとは限らない。「一式」の中身と数量、材料の等級、支給品、追加単価をそろえる。解体後に腐食や段差が見つかった場合、誰が写真を送り、いくら以上なら工事を止めて承認を取るかも決める。
リフォーム見積チェックサービスも、不明瞭な一式工事、二重計上、現場確認、追加費用の合意を相談対象としている。相場の一語で安否を決めず、自分の希望と見積りの対応関係を見る。
範囲
撤去、残す物、下地、配管、設備、仕上げ。
除外
申請、処分、運搬、照明、家具、追加単価。
時間
承認、発注、着工、検査、引渡し、遅延。
生活
家賃、保管、仮住まい、二度の引越し。
完成後
保証、取扱説明、図面、写真、修補窓口。
マンションでは、買った室内だけで工事は決まらない

専有部分の工事でも、共用部分や他住戸へ影響する可能性があれば、管理規約に基づく申請や承認が必要になる。床の遮音等級、工事曜日と時間、資材搬入、エレベーター養生、給排水管、電気容量、ガス、感知器、窓、玄関扉を確認する。購入してから「希望の床にできない」と分かる順序を避ける。
国土交通省の標準管理規約はひな型で、候補マンションの規約そのものではない。実際の管理規約、使用細則、過去の工事申請書式を受け取り、工事会社にも読んでもらう。口頭で「たぶん大丈夫」では、見積りと工期を確定しない。

改修済み・購入後改修、二本の鍵比較
二候補の価格、入居までの支出、10年間の管理費等を同じ欄へ入れる。住宅ローン金利、売却額、将来の追加修繕は自動推定しない。五つの書面が欠けている間は、安い方を出さず、比較できない欄を先に返す。
二つの値札を、二つの入居日へ運ぶ
入力は外部へ送信しません。工事可否、融資、完成日、売却価格を保証するものではありません。
初期値では、740万円差が10年で2万4,000円差になる
改修済みは入居まで4,011万2,000円、購入後改修は3,982万8,000円。管理・積立等と税・保険等を10年分加えると、改修済み4,497万2,000円、購入後改修4,494万8,000円になる。入力例では改修済みが2万4,000円多い。
これは二部屋が同価値という判定ではない。住宅ローンの金利・手数料、工事中のローン支払開始、追加工事、設備交換、売却価格を含めていない。むしろ「2万4,000円なら価格で決められない」と分かることが結果だ。間取りを選ぶ自由、完成を見て買える安心、四か月待つ生活を比べられる。
工事中に住めない四か月を、費用以上に描く

四か月分の家賃44万8,000円は計算できる。だが、素材選びの打合せ、承認待ち、現場確認、納期変更、荷物保管、二度の引越しに使う休日は金額だけでは見えない。佳奈さんの繁忙期と着工が重なるなら、選べる楽しさが負担へ変わる可能性もある。
反対に、完成済みはすぐ住めても、コンセント位置や収納が生活に合わなければ、入居直後の手直しが増える。比較表へ「自分が決める回数」「現場へ行く回数」「入居希望日」「遅れたとき泊まれる場所」を置く。時間を無料扱いしない。
相談先は、安い工事会社を当てるためだけに選ばない
物件と改修を一体で相談するサービス、仲介、設計者、施工会社では担当範囲が違う。相談料、仲介手数料、設計監理料、工事会社からの紹介報酬、現地調査、管理規約確認、見積比較、完成検査、保証窓口を同じ欄で見る。ローン紹介があるなら、物件費と工事費の実行時期も確認する。
サイトから外部へ進むのは、二本の鍵比較で空欄が見えてからだ。「改修済みの配管写真がない」「床材の承認可否を確かめたい」「追加工事の止め方がない」のように質問を持っていけば、施工例の好みだけで相談先を選ばずに済む。
佳奈さんは、安い方ではなく水曜に聞く順番を選んだ
0時26分。二つの総額がほぼ並んでも、佳奈さんは引き分けとは書かなかった。緑には「配管の交換区間と工事中写真」、赤茶には「床材の承認と追加工事の決裁額」。それぞれ違う質問を一枚ずつ差し込んだ。

水曜の昼休み、改修済み住戸の仲介と、未改修住戸を見た設計者へ別々のメールを送る。返事がそろったら、住宅ローンの条件を加えてもう一度比べる。好きな部屋を作るか、見て選ぶか。その楽しみを、740万円という値札だけには決めさせなかった。
リノベーション費用を深掘りする
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改修前に確認する項目
比較表の数字を自分の暮らしへ置き換えるため、次の項目を一度メモします。分からない項目は空欄のまま契約や購入へ進まず、確認する質問に変えます。
- 改修済み部分の保証範囲
- 購入後に追加する工事の総額
- 工事中に住めない期間と仮住まい費用
