本文へ進む

ひとりの今を楽しみ、これからに備える。

注目の特集退職後、最初に届くお金の話
MENU

誕生日のケーキを我慢したのに、貯金が増えない|23歳からのマネープラン

誕生日の翌朝、銀行アプリを見ながら冷蔵庫を開けた栞さん
SHIORI 23 / EP. 01

誕生日のケーキを我慢したのに、貯金が増えない

誕生日の翌朝、佐々木栞さん(仮)は冷蔵庫を開けて、何も取らずに閉めた。入っていたのは半分残った麦茶と、コンビニでもらった小袋のからし。昨夜、駅前のケーキ店で680円のショートケーキを見たけれど、買わなかった。23歳になったのだから、少しはちゃんと貯金しようと思った。

ベッドへ戻り、銀行アプリを開く。残高は18万6,420円。昨年の誕生日に保存した画面は14万5,890円。一年で増えたのは4万530円だった。母から言われた通り毎月2万円貯めていれば、24万円増えているはずなのに。

栞さん「ケーキも買わなかったのに」

誰もいない部屋で言うと、自分でも少しおかしかった。680円と一年の貯金を比べている。そのとき、スマートフォンの上から通知が一件落ちてきた。推している配信者の記念ライブ。チケットは当選、支払額1万3,200円、期限は3日後。

誕生日の翌朝、銀行アプリを見ながら冷蔵庫を開けた栞さん
小さな楽しみを削っても、お金の行き先が一つなら、安心は増えない。(イメージ画像)

23歳IT企業・入社2年目

20.8万円月の手取り

6.7万円1Kの家賃

1万4,500円奨学金返済

18万6,420円現在の預金残高

8万9,000円2か月後の賃貸更新

目次

「ライブを諦めれば、ちゃんとした大人ですか」

栞さんは当選画面を閉じ、もう一度銀行アプリへ戻った。給料日まで9日。4日後には通信費、動画、音楽、クラウド保存など2万4,800円が引き落とされる。食費と交通費もいる。冷蔵庫の扉には、賃貸契約の更新案内。期限は2か月後で、更新料と火災保険など約8万9,000円を見込んでいる。

ライブの当選通知と賃貸更新の封筒を見比べる栞さん
3日後、4日後、9日後、2か月後。残高ではなく、期限が四つ重なっていた。(イメージ画像)

相談に持ってきた答えは、すでに「チケットを諦める」だった。橘は可否を答えず、紙の上に四つの日付だけを書いた。

栞さん「今回は払わないほうがいいですよね」

「その前に、払った後の9日間を歩いてみましょう」

編集長「サブスクを全部解約すれば?」

栞さん「毎日使っている音楽までですか」

「使っていないものを探すのは後。今は期限の違うお金を分けます」

3 DAYS

ライブの支払い

1万3,200円。払うか選べるが、期限を過ぎると今回の選択肢は消える。

4 DAYS

自動引落し

2万4,800円。止めるなら契約ごとの締切を確認する必要があり、明日すべて消えるわけではない。

9 DAYS

次の給料日

それまでの食費、交通、日用品を残高から離してはいけない。

2 MONTHS

賃貸更新

8万9,000円。突然の出費ではなく、すでに日付のある予定だった。

680円と8万9,000円を、同じ「我慢」で解こうとしていた

ケーキを一回やめれば680円残る。それは事実だ。ただし、賃貸更新8万9,000円をケーキだけで作るなら、約131回分になる。栞さんが困っていたのは、ケーキを買ったことではない。毎月の家賃も、数か月後の更新も、楽しみも、未来の貯金も、18万6,420円という一つの数字に重ねていたことだった。

残高が増えた日は安心し、年払いが落ちた日は失敗した気がする。給料日前に残ったら貯金しようとしても、更新、帰省、家電、ライブが来るたび「貯金を崩した」ことになる。実際には、予定へ使ったお金まで失敗と呼んでいた。

残高は、使ってよい金額ではない。必ず払うお金、近いうちに使うお金、楽しむお金、未来へ残すお金が、一つの数字として表示されているだけ。

給料日に、四つの封筒へ先に席を作る

橘は封筒を四つ置いた。銀行口座を四つ作る必要はない。家計簿の欄、目的別預金、メモでもよい。大切なのは、給料日前に残ったものを未来へ送るのではなく、給料が入った日に四つの役割を決めることだった。

01

必ず払う

家賃、光熱、通信、食費、交通、奨学金返済。引落日と月額をそろえる。奨学金は「貯金できない自分の罰」ではなく、毎月の約束として置く。

02

近いうちに使う

賃貸更新、帰省、家電、通院。1〜12か月先の金額を期限までの給料日で割る。今月使わなくても、残高の自由席にはしない。

03

楽しむ

ライブ、ケーキ、外食、古着。余ったら許される枠ではなく、今月の上限を先に置く。使わなければ翌月へ持ち越してよい。

04

未来へ残す

まず生活を守る現金。その先に、何年も使わない長期資金。23歳の栞さんは老後の大金を決めず、未来の席を小さく作る。

四つの色の封筒へ予定と楽しみを分ける栞さん
節約の四分類ではない。今の自分と、少し先の自分が同じ給料日に座る。(イメージ画像)

毎月2万円ではなく、今月の順番を決める

母の「若いうちから毎月2万円」は、栞さんを困らせるための言葉ではない。ただ、手取り、家賃、奨学金、2か月後の更新を見ない2万円は、使うたびに自分を責める目盛りになっていた。

最初の2か月は、更新費用へ先に席を作る。更新が終わったら、その席の一部を生活防衛資金へ移す。さらに余力が続くと分かってから、何年も使わない積立を考える。月1,000円でも未来の席は作れるし、今月ゼロでも、更新費用を期限までに用意することは立派なマネープランだ。

FOUR ENVELOPES

給料日から、四つの封筒へ分ける

チケットを入れた場合と入れない場合を同じ画面で比べます。「買ってよい」とは判定せず、何が残り、何が後ろへ動くかを見えるようにします。










ツールの数字を、栞さんと一緒に読む

現在残高から給料日までの必須支出3万3,800円を分けると、15万2,620円。そこへチケット1万3,200円を入れた場合は13万9,420円、入れない場合は15万2,620円になる。この差は1万3,200円で、良い悪いの差ではない。

栞さんが今の残高から8万円を手元に残し、残りを賃貸更新へ先に分ければ、更新費の不足は小さくなる。次の手取り20万8,000円から月間の必須支出15万6,300円を引いた余力は5万1,700円。更新までの二回の給料日、楽しみの枠、更新後へ回す枠を同じ画面で見れば、チケットだけを犯人にする必要はなくなる。

入力を変えた結果がマイナスなら、楽しみをゼロにする前に、近い予定の期限を動かせるか、月間必須支出に使っていない契約があるか、今月の現金下限をどう守るかを一つずつ見る。逆に余力が出ても、その全額を長期投資へ送らない。翌月の予定がまだ画面に入っていないからだ。

数字が変わったら、封筒を作り直してよい

手取りが少ない月

未来の封筒だけを失敗扱いにしない。必ず払う額、近い予定の期限、楽しみの上限を同じ画面で動かし、足りない額と期間を確かめる。残業代や臨時収入を通常月の前提にしない。

予定が重なった月

賃貸更新と家電の故障が重なれば、先に期限を動かせないものを置く。家電は修理、レンタル、型落ち購入も候補になる。予定資金を使ったことと、浪費したことを同じ言葉にしない。

収入が増えた月

増えた全額を積立額の引上げへ固定しない。生活防衛資金、来年の予定、楽しみ、長期資金へ仮配分し、三か月続いた収入か一度きりかを見てから自動化する。

マネープランは、一度作って守り続ける規則ではない。転職、引越し、病気、推しの活動休止、収入増など、生活が動けば封筒の大きさも順番も変わる。変えた理由を一行残せば、翌年の自分が「なぜこの金額なのか」を思い出せる。

一か月を黒字にするより、十二か月を先に歩く

栞さんは、賃貸更新だけをカレンダーへ置いた。すると、12月の帰省、冬の電気代、春に買い替えたいスマートフォン、年二回のライブが続いた。「臨時出費」が四つもある。どれも毎月ではないが、今年に起きることは分かっていた。

十二か月の紙に更新やライブの予定を置く栞さん
年払いを予定へ変えると、残高が減る月も失敗ではなくなる。(イメージ画像)
EVERY MONTH

毎月の約束

家賃、奨学金、通信、食費。金額と引落日をそろえ、手取りが入った直後に分ける。

THIS YEAR

今年の日付

更新、帰省、家電、通院、趣味。予定額を期限までの給料日で割る。

UNKNOWN

まだ日付のないこと

失業、病気、故障。まずすぐ使える現金で、生活を何か月守れるかを見る。

LATER

何年も先

住まい、働き方、老後。今すぐ金額を固定せず、近い選択を邪魔しない小さな席から始める。

生活を守る現金と、長く育てるお金は同じ競技ではない

預金はすぐ使いやすく、近い支出や生活を守る役に向く。投資は値動きがあり、必要な日に元本を下回る可能性がある。だから「若いほど全部投資」でも「怖いから全部預金」でもなく、使う時期で役を分ける。

栞さんは、賃貸更新へ使う8万9,000円を長期資金に数えない。給料が止まったときの現金も、ライブ資金と混ぜない。その二つを分けた後、何年も使わないお金が毎月続けて残るなら、初めて積立の仕組みを調べる。23歳に必要なのは、65歳までの正解より、転職や引越しを選べる現金の余白だった。

守るだけで苦しいなら、収入の側にも小さな扉を作る

支出には下限がある。家賃も奨学金も、今日の工夫だけで半額にはならない。栞さんは「節約できない自分」を責める代わりに、半年後の手取りを変える方法も同じ紙へ置いた。

今の仕事で増やせる役割

担当業務、評価条件、資格手当を確認する。残業を増やすだけの案にはしない。

転職市場での名前

今している作業が、外ではどんな職種・スキルと呼ばれるかを見る。応募はまだしなくてよい。

月3,000円の試作品

得意な資料整理や文章を、小さな成果物にする。高額講座や機材を買う前に一つ作る。

収入を増やす案にも、時間、疲労、初期費用、会社の副業規定という制約がある。節約と同じく、始めたこと自体を成功にしない。30日後に続ける、変える、やめるを選べる大きさで試す。

相談先は、商品より先に四つの封筒を見てくれるか

家計を一人で整理しきれないときは、相談を使ってよい。ただし、最初から特定の商品へ入れる場所ではなく、収支、予定、制度、選択肢を一緒に分けられるかで選ぶ。

持っていくもの

直近3か月の明細、年払い一覧、資産と借入、近い予定、聞きたいこと。

予約前に見るもの

相談料金、相談範囲、担当者の立場、商品販売の有無、相談後の連絡方法。

その場で決めないもの

仕組み、費用、解約・換金条件を持ち帰れない長期契約。

CHOOSE AFTER SORTING

次に開くのは、空いている封筒のページだけ

毎月の必須支出が重いなら固定費、近い予定が混ざっているなら生活防衛資金、収入側を試したいなら転職・副業へ。四つ全部のサービスを一度に契約する必要はない。外部サービスを比べるときは、総額、最低期間、解約方法、個人情報の送信先、相談後の連絡停止方法までそろえて見る。

栞さんが買ったのは、680円の失敗ではなかった

夕方、栞さんは駅前のケーキ店へ戻った。昨夜見たショートケーキは売り切れていたので、少し小さなものを一つ選んだ。チケット代も払った。賃貸更新の8万9,000円は、今日分けられる額と次の二回の給料日へ置いた。

予定を分けたあと、近所の店で小さな誕生日ケーキを選ぶ栞さん
楽しみを消さずに予定を守れたとき、家計は我慢の記録ではなくなる。(イメージ画像)

栞さん「毎月2万円は、まだできません」

「今月、何を分けましたか」

栞さん「更新と、9日分の生活と、ライブ。あと、来月の私の席を少し」

ENJOY NOW, PREPARE NEXT

マネープランは、残高を増やす競争ではない

必ず払う、近いうちに使う、楽しむ、未来へ残す。四つを給料日に分ければ、残高が減る月にも理由が見える。ケーキを我慢した回数ではなく、今の自分と少し先の自分へ、同じお金から席を用意できたか。そこから、おひとりさまのマネープランは始まる。

栞さんはまだ月2万円を貯金には回せていない。次の給料日に、更新と生活とライブへ分けたあと手元にいくら残るか、まず数字で確認することにした。金額を増やせるかどうかは、その結果を見てから決める。

ひとり暮らしのお金を本で整理する

この記事で整理した数字や条件を、自分の生活に当てはめてもう少し考えたいときは、関連書籍も候補になります。内容・価格・在庫・配送条件は商品ページで確認し、必要な範囲だけ選んでください。

Amazonで関連書籍の候補を確認する

※このページはAmazonアソシエイトとして、適格販売により収入を得ています。

お金を使う前に決める線引き

比較表を閉じる前に、数字を三つだけ自分の予定へ置き換えます。全部が決まらない場合は、分からない項目を残したまま契約や追加注文へ進まないことが大切です。

  • 今月使ってよい自由費の上限
  • 予定外の出費が出たときに止める項目
  • 翌月へ持ち越す金額と見直す日
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

おひとりさまの生活設計を専門にする編集・調査チームです。編集部には、老後・お金、住まい、仕事・副業、転職・婚活、旅・食事、美容・セルフケアの各分野に詳しいスペシャリストが在籍し、それぞれの実務経験や実体験をもとに執筆・確認しています。経験談をそのまま押しつけるのではなく、年齢、収入、住む場所、体力、時間、予算など条件を分け、費用・手間・続けやすさ・失敗しやすい点まで比較できる判断材料に整理します。制度や料金は公式情報と更新履歴を照合し、旅や食事は現地の動線と一人での過ごし方を具体化。調査、論点整理、構成、比較設計、表現・リンクの品質確認を分担し、広告提携の有無と記事の評価軸を分けています。専門家集団として、読者が自分の基準で次の一歩を決められる編集を行います。