通院が続き、仕事や一人暮らしの家事に支障が出てくると、「障害年金は病名で決まるのだろうか」と気になることがあります。障害年金は、病名だけで受給の可否が決まる制度ではありません。
原因となった病気・けがの初診日、その日に加入していた年金、保険料の記録、障害認定日の状態を順に確認します。国民年金が基礎となる人は障害基礎年金、厚生年金の加入中に初診日がある人は障害厚生年金が関係します。まずは「どの病気なら対象か」を自己判断せず、4つの確認点から自分の相談先を見つけましょう。
この記事で分かること
- 病名ではなく、障害の状態と制度上の条件で判断されること
- 障害基礎年金と障害厚生年金を分ける初診日の考え方
- 自分で確認する記録と、最初に相談する窓口
「対象になる病名」を探す前に、4つの条件を分ける
障害年金を調べると、特定の病名が対象かどうかを知りたくなります。ただし、病名の一覧だけでは受給できるか判断できません。日本年金機構の障害年金の受給要件では、病気やけがの初診日、その時点の制度加入、保険料納付要件、障害認定日における障害の状態などを確認します。
ここでいう障害年金は、国民年金や厚生年金保険に加入している間などに、病気・けがによって一定の障害状態になった場合の公的年金です。障害者手帳の有無や、職場で働いているかだけで受給可否が決まるわけではありません。年金の認定基準と手帳の制度は別です。手帳があるから必ず受給できる、手帳がないから対象外、とは言い切れません。
診断書に書かれた病名は大切な情報ですが、それだけを切り取らず、症状の経過や治療、日常生活への影響などを所定の基準で審査します。精神の障害について、厚生労働省の障害認定基準は、原因、症状、治療経過、具体的な日常生活状況などを総合的に見るとしています。病名を見て自分で「対象外」と決めたり、反対に受給できると決めつけたりせず、個別の記録を相談窓口で確認してください。

最初に確かめる「初診日」は、診断名が決まった日とは限らない
初診日は、障害の原因となった病気やけがについて、初めて医師または歯科医師の診療を受けた日です。診断名が確定した日、症状を自覚した日、今の病院に移った日、年金を請求する日と同じとは限りません。複数の医療機関を受診している場合は、以前の受診が同じ傷病との関係でどう扱われるかを確認します。
初診日が重要なのは、その日にどの年金制度に加入していたか、納付状況をどこまでさかのぼって見るか、障害認定日がいつになるかの起点になるからです。初診日の記憶があいまいでも、そこで作業を止めなくて大丈夫です。診察券、お薬手帳、紹介状、領収書、診療明細、健康保険の記録、過去の手帳や日記など、日付が分かるものを手元に集め、年金事務所や自治体の窓口へ「初診日を確認したい」と相談します。書類の種類は状況で異なります。

障害基礎年金と障害厚生年金は「初診日の加入制度」で分かれる
初診日があった制度と年金の種類を照らす
障害年金には主に障害基礎年金と障害厚生年金があります。どちらの制度を確認するかは、原則として障害の原因となった病気・けがの初診日がどの年金制度の期間にあるかで変わります。今の働き方だけを見て決めるのではなく、初診日当時の加入状況を確認してください。
国民年金・厚生年金の基本や加入記録の見方から確認したい場合は、一人暮らしの公的年金入門も参考になります。この記事では障害年金の初診日と確認先に絞って説明します。
| 確認する制度 | 初診日の主な条件 | 障害等級の枠 | 次に確認すること |
|---|---|---|---|
| 障害基礎年金 | 国民年金加入中、20歳前、または国内在住の60歳以上65歳未満で制度未加入の期間など | 1級・2級 | 納付要件(20歳前初診は別扱い)、認定日の状態、相談窓口 |
| 障害厚生年金 | 厚生年金保険の被保険者期間中 | 1級・2級・3級 | 初診日時点の厚生年金加入記録、納付要件、認定日の状態 |
初診日の状況を選び、次に確認することを見る
当てはまる項目を開くと、相談時に確認したい制度と記録が分かります。これは窓口を探すための入口で、受給資格や等級を判定するものではありません。
初診日が20歳前だった
障害基礎年金の要件を確認します。保険料納付要件は別扱いですが、本人の所得による支給制限など、ほかの確認事項があります。日本年金機構または年金事務所・自治体窓口で初診日の記録を相談してください。
初診日に国民年金へ加入していた
障害基礎年金の要件を確認します。初診日の前日時点の保険料記録と、障害認定日の状態を年金記録・診療記録で確かめます。納付要件を満たすかは記録全体で確認が必要です。
初診日に厚生年金へ加入していた
障害厚生年金の要件を確認します。初診日時点の加入記録が分かる資料を用意し、等級や障害基礎年金との関係を年金事務所へ尋ねます。
初診日に60歳以上65歳未満で、日本に住み、年金制度に加入していなかった
障害基礎年金に関する対象期間かを確認します。初診日当時の住所と加入状況を証明できる記録を探し、年金事務所または自治体窓口へ相談してください。
初診日や当時の加入制度が分からない
制度を選び切れなくても相談できます。以前の勤務先、医療機関、診察券や紹介状など、初診日を探す手掛かりを持って年金事務所へ「初診日と加入制度を確認したい」と伝えます。
初診日に厚生年金へ加入していて1級または2級に該当する場合は、障害厚生年金に障害基礎年金が上乗せされます。3級は障害厚生年金に設けられた等級です。初診日から5年以内に傷病が治り、障害厚生年金より軽い障害が残った場合に、条件により障害手当金(一時金)が関係することもあります。詳しい受給要件は日本年金機構の障害基礎年金・障害厚生年金の案内で確認できます。併給・調整は個別事情で異なるため、表だけで請求できると判断しないでください。

保険料納付要件は初診日の前日の記録で確認する
まずは納付済期間と免除期間を合わせて確認
20歳前に初診日がある場合を除き、障害基礎年金・障害厚生年金では保険料納付要件が関係します。日本年金機構の受給要件の説明にある基本の見方は、初診日の前日において、初診日のある月の前々月までの被保険者期間のうち、保険料納付済期間と免除期間を合わせて3分の2以上あるかです。免除期間は含まれます。未納、免除、納付猶予などの記録を混同せず、ねんきんネットや年金事務所で確認します。
特例と20歳前初診は、別の条件として扱う
さらに、初診日が2036年3月31日までで、初診日に65歳未満などの条件を満たす場合には、初診日の前々月までの直近1年間に未納がないことによる特例があります。対象になるかは初診日や年齢、記録で変わるため、「最近の1年だけ払っているから大丈夫」と自己判断はできません。制度の加入が切り替わった時期や記録の訂正がある人も、初診日を確かめる前に保険料の結論を出さないようにしましょう。
20歳前に初診日がある人は、年金制度に加入する前の傷病として保険料納付要件が不要ですが、所得による支給制限など別の確認事項があります。納付要件が不要だから、ほかの要件も不要という意味ではありません。年齢や初診日の区分を相談時に伝えると、確認する制度を整理しやすくなります。

障害認定日は、原則として初診日から1年6か月後
基準日と、その後に状態が変わった場合を分ける
障害認定日は、障害の状態を定める基準日です。原則は初診日から1年6か月を過ぎた日ですが、それより前に傷病が治った(症状が固定した)場合や、人工透析・人工関節など所定の状態では例外があります。例外の日付を自分で当てはめるのではなく、傷病と治療の記録をもとに確認してください。
障害認定日に基準を満たさなかったとしても、その後状態が悪化して65歳に達する前までに該当する状態になった場合、事後重症による請求が可能なことがあります。事後重症では、原則として請求日の翌月分から支給され、請求書は65歳の誕生日の前々日までに提出する必要があります。受給開始時期に関わるため、先送りせず窓口で相談してください。
障害認定日による請求でさかのぼって受けられる年金は、時効により5年分が上限です。詳しい請求時期は日本年金機構の障害基礎年金の案内・障害厚生年金の案内で確認してください。
等級は、病名や「働いている・いない」だけで決められません。生活で何がどの程度難しいか、治療内容、症状の経過などを所定の基準で審査します。精神の障害では日常生活の状況を総合的に認定する基準があり、病名が同じでも結果が同じとは限りません。日々の困難を誇張せず、できること・支援が必要なこと・できない日があることを、具体的に整理して医師に伝えましょう。

病気やけがの名前より、暮らしへの影響を具体的に整理する
審査で確認されるのは、病名を並べたリストではありません。診断書や病歴・就労状況等申立書などを通じて、障害の状態やこれまでの経過を確認します。どの書類が必要かは、初診から現在までの医療機関、障害の種類、請求方法などによって違います。特定の病気なら必ず受給できる、あるいは病名がリストにないから対象外、と案内するのは適切ではありません。
相談前に、次のような情報を一枚にまとめておくと、困りごとを伝えやすくなります。
- 原因となった病気・けがで最初に診療を受けた時期と医療機関
- その頃に会社員だったか、自営業・無職・学生だったか、20歳前か
- 転院歴、休職や退職の時期、治療を中断した期間の有無
- 食事、買い物、掃除、金銭管理、通院、対人関係などで困っていること
- 一人でできること、助けがあればできること、調子により変わること
日常生活の困りごとは、できる・できないの二択で書かなくて構いません。「週に何度」「どの作業で」「誰のどんな手助けが必要か」のように、状態を具体化します。日記を毎日つける必要はありません。本人の負担が大きいときは、家族や支援者に記録を手伝ってもらえるか、医療機関や相談窓口で尋ねてください。働いていることだけで自動的に対象外になるわけではありませんが、就労状況も含めた審査の考え方は障害や事情で異なります。

請求は窓口に相談してから、初診日の証明と診断書を準備する
障害年金の請求は、手元の書類をすべてそろえてからでなければ相談できないわけではありません。むしろ、初診日や受診歴、加入制度を確認してから、必要書類と提出先を案内してもらう方が安全です。日本年金機構の障害年金の請求手続きでは、請求書、所定様式の診断書、初診時の医療機関と診断書作成医療機関が異なる場合の受診状況等証明書、病歴・就労状況等申立書などが挙げられています。必要書類は個別ケースで異なります。
- 初診日の手掛かりを集める。古い医療機関の名前、受診時期、紹介状・診察券などを整理する。
- 加入記録を確かめる。初診日時点の年金制度と保険料記録を、ねんきんネットや年金事務所で確認する。
- 先に相談先へ連絡する。障害基礎年金は市区町村の国民年金窓口または年金事務所等、障害厚生年金は年金事務所等へ、提出先を確認する。
- 必要な診断書・証明書を依頼する。診断書は指定様式や現症日の条件があるため、先に様式と提出時期を確認する。
- 申立書を記録と照らして作る。年月、受診先、生活状況を整理し、分からない部分を窓口へ確認してから提出する。
初診時の医療機関が閉院している、記録が残っていない、転院が多いなど、証明が難しいケースもあります。すぐに「請求できない」と結論づけず、手元に残る資料や別の確認方法について年金事務所へ相談してください。診断書の作成費用、取得できる書類、予約の要否なども医療機関や窓口で異なります。

ひとりで準備するのが難しいときも、最初の相談は小さく始められる
体調が安定せず、電話や書類集めそのものが負担になることがあります。その場合は、まず「初診日を確認したい」「障害年金の相談予約を取りたい」と短く伝えるだけでも、次の手順を聞けます。電話で説明しにくければ、初診時期のメモや年金番号が分かる通知を手元に置き、窓口で見せる方法もあります。家族・支援者に同行や連絡を頼みたいときは、本人確認や委任状などが必要か事前に確認します。
年金事務所や自治体の窓口では、制度や書類の確認を相談できます。社会保険労務士などへの依頼は選択肢の一つですが、必須ではありません。依頼を検討する場合は、費用、契約範囲、本人が行う作業、連絡方法を比較し、契約を急がないでください。無料をうたう相談でも、その後の商品・サービス案内や個人情報の取扱いを確認します。
相談の前に準備するのは、完璧な申立書ではなく、次の3点で十分です。
1. 初診日の手掛かり
最初に診療を受けた医療機関と、おおよその時期。
2. その頃の加入状況
会社員、自営業、学生、20歳前など、分かる範囲で。
3. 今の暮らしで困っていること
通院、家事、外出、仕事などで、支援が必要な場面。
この3点を持って、障害基礎年金なら市区町村の国民年金窓口または年金事務所、障害厚生年金なら年金事務所へ相談し、担当窓口と必要書類を確かめてください。初診日の制度が判断できない、病状や受診歴が複雑、申立てに不安がある場合も、最初から結論を出さず「どの条件を調べればよいか」から尋ねられます。

まずは初診日と加入状況を、手元の記録から確かめる
障害年金は、特定の病名だけで対象かを決める仕組みではありません。初診日、加入制度、保険料記録、障害認定日の状態を確認し、個別に請求要件を照らし合わせます。制度を知ったばかりの段階で、自分の病気が対象かどうかを一人で結論づける必要はありません。
今日できる一歩は、最初に診療を受けた時期と医療機関、当時の働き方、暮らしで困っていることをメモにすることです。それを持って公的窓口へ相談し、次に集める証明書や診断書の順番を確認しましょう。いま手元にある情報だけで足りるか、どの記録を探せばよいかを聞くところから始められます。
日本年金機構「障害年金」で制度の概要を確認し、個別の請求書類や提出先は窓口に相談してください。
