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老後資金は年収より家計で試算|収支と住居費から考える

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SUNDAY, 19:42 — THE RENTAL RENEWAL LETTER

日曜の夜、美咲さん(仮)は冷蔵庫の前で立ち止まっていた。手にしていたのは賃貸契約の更新案内。次の2年間も家賃は月9万2,000円のままだった。値上げがなかったことには、少しほっとした。それでも、その紙を磁石で留めようとした瞬間、別の数字が頭に浮かんだ。

美咲さん「この9万2,000円、70代になっても払うんですよね」

美咲さんは47歳。都内のIT企業で営業事務をしている。額面年収は450万円。大きな浪費はなく、老後用と決めた預貯金も420万円ある。「きちんと働いて、少しずつ貯めてきたつもりなんです。でも、年収450万円の人は老後資金をいくら用意すればいいのか調べるほど、不安になってしまって」

検索画面には「年収別」「年代別」「老後には○千万円」と、たくさんの数字が並んでいた。けれど、美咲さんが知りたいのは世の中の平均ではない。月に一度、学生時代の友人と夕食を楽しみながら、ひとりで無理なく暮らしていけるのか。その答えだった。

目次

平均年収の表を開いたまま、話が止まった

同じ年収でも、老後の収支を大きく変えるものがある。老後も続く住居費、本人の年金加入記録に基づく年金見込額、何歳までどのくらい働くか、現在の資産と退職までの積立、医療・介護・住み替えなどの臨時支出だ。

この記事では、美咲さんの将来を三つに分けて考える。今の部屋で65歳から仕事をしない暮らし。60歳で家賃の低い部屋へ移る暮らし。今の部屋に住み、65歳から68歳まで週3日ほど働く暮らし。どれかを正解にするためではない。条件を一つ動かすと、自分の老後がどう変わるかを見るためだ。

「平均額を入れれば、計算できますよね?」

平均年収表ではなく家賃と働き方の条件を比べる美咲さん
平均額を入口にして、家賃・働く年数・毎月の不足を自分の条件へ置き換える。(イメージ画像)

相談テーブルに、美咲さんが家計簿アプリを開いたスマートフォンを置いた。

「まず、年金の見込額は確認しましたか?」

美咲さん「ねんきんネットで、65歳から月11万8,000円という表示を見ました」

編集長「では、生活費は統計の平均を入れて、引き算すれば完成ですね」

「完成しません。美咲さんの家賃は、平均の住居費とはかなり条件が違います」

総務省統計局の2025年家計調査では、65歳以上の単身無職世帯の消費支出は月平均14万8,445円だった。ただし、そのうち住居費の割合は7.7%。持ち家を含む世帯全体の平均なので、家賃9万2,000円を払い続ける美咲さんの生活費として、そのまま使うことはできない。

平均は「ほかの世帯を眺める窓」にはなる。でも、自分の家計の答えではない。美咲さんは直近3か月の支出を見ながら、住居費以外の生活費を月13万円と置いた。ここには、月に一度の友人との夕食代8,000円も入っている。

美咲さん「外食をやめれば、少しは安全になりますよね」

「月8,000円を25年間で考えると、単純計算で240万円です。小さくはありません」

編集長「では、真っ先に削る?」

「美咲さんが守りたい暮らしを、最初に消す必要はありません。家賃や働く期間も、同じ画面で比べましょう」

老後資金の計算は、楽しみを削る順番を決める作業ではない。自分にとって大切な支出を残すには、どの条件を動かせるかを探す作業でもある。まずは自分の年金見込額を確認する手順から始める。

美咲さんの数字を一枚にする

項目 入力値
現在年齢 47歳
基本の退職年齢 65歳
試算期間 65歳から90歳まで
本人が確認した年金見込月額 11万8,000円
住居費以外の生活費 月13万円
現在の老後用資産 420万円
退職までの積立 月3万円

11万8,000円は「年収450万円だから算出した額」ではなく、美咲さんが自分の加入記録を基に確認した想定値だ。ねんきんネットの「詳細な条件で試算」では、今後の加入制度、収入見込額、就業見込期間、受給開始年齢などを設定できる。働き方を変えた案は、サイト内の概算だけで終わらせず、ねんきんネットでも条件を変えて確認する。

ケースA:今の部屋で、65歳から仕事をしない

住居費9万2,000円と、それ以外の生活費13万円。毎月の支出は22万2,000円になる。年金見込月額11万8,000円との差は月10万4,000円。25年間同じ状態が続くと仮定した単純差額は3,120万円だ。

一方、現在の老後用資産420万円に、月3万円を65歳まで18年間積み立てると、65歳時点では1,068万円になる。運用益を含めない単純計算だ。

CASE A

今の住まいを続ける

65歳以降の毎月の不足
10万4,000円
25年間の単純不足額
3,120万円
65歳時点の老後用資産
1,068万円
条件内で埋まらない差
2,052万円

美咲さん「やっぱり、2,000万円以上足りないんですね」

「この条件を25年間固定した結果です。美咲さんの運命を言い当てた数字ではありません」

この試算には、物価変動、運用益、税金・社会保険料、年金額の改定、医療・介護などの臨時支出を含めていない。90歳より長く暮らす可能性もある。反対に、生活費や家賃がずっと同じとも限らない。結果は「足りる・足りない」の判定ではなく、次にどの条件を確かめるかを見つける材料として使う。

ケースB:60歳で、家賃6万8,000円の部屋へ移る

次は、60歳で家賃6万8,000円の部屋へ移る案だ。引っ越しと初期費用には80万円を見込む。家賃は月2万4,000円下がる。60歳から65歳までの5年間に増える積立余力は単純計算で144万円。引っ越し費用80万円を引いても、65歳時点の老後用資産はケースAより64万円多い。

CASE B

60歳で住居費を変える

引っ越し・初期費用
80万円
65歳時点の老後用資産
1,132万円
65歳以降の毎月の不足
8万円
条件内で埋まらない差
1,268万円

ケースAとの差は784万円。友人との夕食を残したままでも、住居費を変える影響は大きかった。

編集長「では、60歳で引っ越す案に決定ですね」

美咲さん「でも、知らない街で家賃だけ安くなっても、たぶん寂しいです」

「それも立派な条件です。病院、買い物、友人との距離を無視した最安案は、美咲さんにとっての最適案ではありません」

美咲さんは、すぐに転居先を決めないことにした。まずは候補の街で休日を過ごし、夜道、スーパー、駅までの坂道を確かめる。家賃だけでなく、借り続けやすさや生活圏を比べるならひとり暮らしの賃貸見直しも一緒に使える。

ケースC:今の部屋で、68歳まで週3日働く

老後資金の試算結果を見直し次の働き方を考える美咲さん
試算結果を見て、支出だけでなく働き方の選択肢も見直す。(イメージ画像)

3つ目は、今の部屋に住み続け、65歳から68歳までの3年間、手取り相当で月9万円の就労収入があると置く案だ。3年間の就労収入は単純計算で324万円。ケースAの差2,052万円は、1,728万円まで縮まる。

CASE C

68歳まで働く

65〜67歳の就労収入
月9万円
3年間の就労収入合計
324万円
条件内で埋まらない差
1,728万円

ここでは分かりやすくするため、働くことで変わる税金・社会保険料や年金額を計算していない。実際には勤務条件による社会保険加入や、将来の年金見込額への反映を確認する必要がある。また「68歳まで働く」と一行で書くのは簡単でも、18年後の体力や雇用は約束できない。

美咲さん「週3日なら、働くのも悪くないと思います。でも、それを前提にしすぎるのは怖いですね」

「だから、働けたら上乗せになる案と、働けなくても破綻しにくい案を分けて持ちましょう」

働く期間を延ばす案は、お金だけでなく、人とのつながりや生活のリズムにも影響する。ただし、健康や求人状況も含む選択肢なので、唯一の安全策にはしない。

もう一つの攻め方:47歳の今から、小さな収入源を育てる

ここまでの三案は、家賃を下げるか、65歳以降も雇われて働くかという話だった。

美咲さん「どれも、老後が来てから何とかする感じですね」

編集長「では今から、年収を一気に倍へ」

「一気に稼ぐ話ではなく、18年かけて小さな収入源を育てる案なら考えられます」

美咲さんには、営業事務で身につけた表計算、資料整理、相手が迷わない手順書を作る力がある。生成AIを使えば、構成案を出す、説明文のたたき台を作る、作業手順を整理するといった準備は以前より始めやすい。ただし、AIを開けば仕事が発生するわけではない。顧客を見つけ、要望を聞き、出力を確認し、納期と品質に責任を持つのは本人だ。勤務先や顧客の非公開情報をAIへ入力してはいけない。

仮に、副業の売上から手数料・経費・税金などを除き、48歳から65歳まで老後用資産へ月1万円を実際に回せたなら、運用益を含めない17年間の合計は204万円になる。これは「AI副業なら月1万円稼げる」という予測ではない。月1万円が残る状態を作れた場合、老後試算のどこが動くかを確かめたものだ。

  1. 勤務先の副業規定を確認する週に無理なく使える時間も先に決める。
  2. 役に立つ作業を三つ書き出す営業事務の経験を、他人が頼みたい単位へ分ける。
  3. 小さな試作品を一つ作る架空の情報だけで表計算テンプレートか手順書を作る。
  4. 需要と価格を調べる案件や販売場所を見て、求められる品質を知る。
  5. 30日後に続けるか決める時間、費用、反応、家計に残る見込額で判断する。

副業は、節約と違って収入を増やせる可能性がある。同時に、時間や費用を使っても売上にならない可能性もある。だからこそ、大きく賭けずに小さく試す。入口はひとり暮らしの副業を30日で試す手順へつなげる。

3つの老後を並べると、動かすべき数字が見えてくる

12か月の収支と季節ごとの支出を並べる美咲さん
月平均だけでなく、季節ごとの支出の波を重ねて見る。(イメージ画像)

試算の前提を置いたら、住まいと毎月の支出を見直す場面へ進みます。

三色のカードを机に並べ、三つの老後の暮らしを比べる47歳の女性
未来を一つに決めるのではなく、同じ自分の暮らしを三枚並べてみる。(イメージ画像)
比較項目 CASE A
現住居・65歳退職
CASE B
60歳で住み替え
CASE C
68歳まで就労
65歳時点の老後用資産 1,068万円 1,132万円 1,068万円
65歳以降の住居費 月9.2万円 月6.8万円 月9.2万円
年金開始後の基本月収支 −10.4万円 −8万円 −1.4万円
追加条件 なし 引っ越し費用80万円 3年間、月9万円で就労
条件内で埋まらない差 2,052万円 1,268万円 1,728万円

結果を最も大きく動かしたのは、月に一度の外食ではなく住居費だった。短時間就労も差を縮めたが、働けることを前提にしすぎない注意が要る。47歳から家計に残る副業収入を育てられれば、老後資産を増やす第四のレバーになる。そして三案とも、臨時支出を入れる前の概算では差が残った。だからといって、すぐ金融商品を選ぶ段階ではない。年金見込額、実際の生活費、退職金の有無など、まだ確かめられる数字がある。

あなたの数字で「3つの老後」を作る

一つの未来を精密に予言しようとすると、入力できない項目の多さに疲れてしまう。最初は、今の暮らしを続ける案、住居費など固定費を変える案、働く期間や収入を変える案の三つで十分だ。画面で変えるのは一度に一項目だけ。結果が動いた理由が分からなくなるのを防げる。

  • 自分で確認した年金見込月額
  • 住居費を含む現在の生活費
  • 老後用として分けられる現在資産
  • 退職までに続けられる毎月の積立
  • 退職年齢と、その後に働く場合の手取り収入

結果の下では、物価、税・社会保険料、運用益、臨時支出を含めているか確認できる。入力した金額は保存・外部送信されず、この画面の中だけで計算される。

THREE FUTURES, ONE LIFE

3つの老後を、同じ条件から並べる

美咲さんの数字から始め、一項目ずつ自分の条件へ変えられます。入力値はブラウザ内だけで計算します。

01 年齢と期間

02 毎月の暮らし

03 資産と積立

04 動かす条件


YOUR THREE SCENARIOS

同じ美咲さんでも、ここまで変わる

CASE A

今の住まいを続ける

退職時の準備資産
年金開始後の基本月収支
終了時点の概算
CASE B

住居費を変える

退職時の準備資産
年金開始後の基本月収支
終了時点の概算
CASE C

働く期間を変える

退職時の準備資産
年金開始後の基本月収支
終了時点の概算
WHAT MOVED MOST

この試算にまだ入れていないもの

物価と家賃の変動、年金額の改定、税・社会保険料、運用による増減、医療・介護費の個人差は自動推計していません。結果は一項目を動かした差を見るために使います。

美咲さんが今週すること

相談の終わりに、美咲さんはノートへ三つだけ書いた。ねんきんネットで今の働き方を続ける案と勤務期間を変える案を試算する。家賃以外の生活費を3か月記録し、13万円という入力値を確かめる。住み替え先を決めるのではなく、候補地域の家賃と生活環境を一つ調べる。

そして今月は、勤務先の副業規定を確認し、営業事務の経験で作れる試作品を一つ決める。老後の数字を守るだけでなく、収入側の条件も動かせるか試すためだ。

美咲さん「今日、保険か投資を決めることになると思っていました」

編集長「私は家を買うところまで想像していました」

「今日は、決めなくていいことが分かった。それも前進です」

更新案内は、まだ冷蔵庫に貼ったままだ。でも美咲さんにとって、9万2,000円はもう、ただ怖いだけの数字ではなくなった。変えない案、変える案、別の条件で支える案。三つに分ければ、次に確かめることが見える。月に一度の夕食も、最初から消さなくていい。

自分だけでは決めにくいとき、相談前に見る5項目

老後資金の相談前に収支と質問をノートへ整理する美咲さん
相談前に、聞きたいことと自分の数字を一枚にまとめる。(イメージ画像)

年金、退職金、住み替え、資産形成を一緒に整理したい場合は、第三者への相談も選択肢になる。ただし「無料」という表示だけで決めず、申込み前に次を確認したい。

  • 何回目まで無料で、どこから料金がかかるか
  • 家計整理だけを相談できるか
  • 特定の商品を扱う相談なのか、幅広い選択肢を扱うのか
  • 提案を断った後の連絡を停止できるか
  • 入力した個人情報が、どの会社へ渡るか

相談の目的は、商品を買うことではない。自分だけでは整理しきれない条件を確認し、納得できる選択肢を持ち帰ることだ。個人年金を選択肢へ入れる場合も、先に個人年金の仕組みと相談前チェックで、受取条件、費用、解約時の扱いを整理する。

この数字を、次の相談へ持っていく

この記事の試算は、未来を一つに決めるためではなく、住居費、働く期間、毎月の積立のどれが結果を動かすかを見るためのものだ。画面では、物価、税・社会保険料、運用益、臨時支出のうち、まだ入れていない項目を結果の直下に残す。

相談先へ持っていくのも、「老後が不安です」という一言だけではない。年金見込額、三か月の生活費、三つの試算、守りたい支出。この四つがあれば、商品の説明を聞く前に、自分が何を決めたいのかを話せる。

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この記事を書いた人

おひとりさまの生活設計を専門にする編集・調査チームです。編集部には、老後・お金、住まい、仕事・副業、転職・婚活、旅・食事、美容・セルフケアの各分野に詳しいスペシャリストが在籍し、それぞれの実務経験や実体験をもとに執筆・確認しています。経験談をそのまま押しつけるのではなく、年齢、収入、住む場所、体力、時間、予算など条件を分け、費用・手間・続けやすさ・失敗しやすい点まで比較できる判断材料に整理します。制度や料金は公式情報と更新履歴を照合し、旅や食事は現地の動線と一人での過ごし方を具体化。調査、論点整理、構成、比較設計、表現・リンクの品質確認を分担し、広告提携の有無と記事の評価軸を分けています。専門家集団として、読者が自分の基準で次の一歩を決められる編集を行います。