【年代別】老後資金の準備について教えてください
老後の長い時間は多くの人に訪れますが、若ければ若いほど現実感が湧かないことも事実。自分の両親や祖父母を身近に見て貯蓄の必要性を感じている人もいれば、遠方にいるために自分の未来と重ねることができず、いつか考えればいいと先延ばしにする人もいるなど、個人差もあります。
しかし、老後の備えは早く始めたほうが圧倒的に楽です。年代別の老後資金の準備についてご紹介します。
老後の生活にゆとりを感じている人はどのくらいいる?
老後を笑顔で暮らすためには、お金の備えの問題を避けて通るわけにはいかないものですね。中には、お金がなくて困っていながら、なかなか人には話せないという状況に陥っている高齢者もいます。日常生活では高齢者の経済的な現実を実感できる機会がないかもしれませんが、意識的に情報を得ようとしてみると、厳しい実態を知ることができます。
それでは、早速、内閣府が全国の60歳以上3,000人に調査した「平成28年高齢者の経済・生活環境に関する調査結果(概要版)」を参考に高齢者の暮らし向きの実態を見てみましょう。
【経済的な暮らし向き】
- ゆとりがあり全く心配ない:15%
- あまりゆとりがないがそれほど心配ない:49.6%
- ゆとりがなく多少心配:26.8%
- 苦しく非常に心配:8%
- その他0.6%
自分はどちらになるだろうかと考えてみよう
経済的な暮らし向きについて、全く心配ない、それほど心配ないと答えた人の割合は64.6%。ゆとりがあり全く心配ないと回答している人は、わずか15%です。一方、ゆとりがなく多少心配、非常に心配と答えた人の割合は34.8%。将来、このどちら側に自分が入るのか、それは、現役時代の働き方だけでなく貯蓄の努力によっても左右されます。
数字で見るだけでは具体的な生活イメージと結びつかない人もいるかもしれませんが、ゆとりがないために心配な気持ちを毎日、毎月、何年も持ち続ける生活はつらいもの。楽観的な考え方を持つようにするなど、心の持ちようでも日々を楽しく生きるための工夫は可能ですが、お金がなくて友人や親戚に会う回数を減らす、外出の回数を減らすなどの判断をしなければならない生活は避けたいですよね。
極端な例と感じられるかもしれませんが、老後破産という言葉を聞いたことのある人もいるでしょう。現役時代に比較的恵まれた生活をしていた人でも、老後になって、いきなり破産という事実に直面する人もいるのです。おひとりさまの場合、そんなリスクに直面したときに1人で悩みを抱えなければならなくなるかもしれません。そんな不安を少しでも感じるのであれば、やはり、ある程度の老後のための備えを、なるべく早くからしておくことをおすすめします。
老後の収入はどのくらい?
貯蓄が必要とはいっても、老後には年金を始めとした収入もあります。そのため、収入と比較した生活費の不足分を備えておけばOKです。老後の収入につき、先ほどご紹介した内閣府の調査による金額を下記に示します。
【年金を含んだ平均収入額(配偶者がいる場合は二人の平均収入額)】
- 5万円未満:5%
- 5〜10万円未満:15.2%
- 10〜20万円未満:32.9%
- 20〜30万円未満:26.4%
- 30〜40万円未満:9.3%
- 40〜60万円未満:5%
- 60万円以上:3.6%
- 不明:2.7%
出典:内閣府
上記収入でどのくらい生活費が不足するのか、参考となる支出金額を見てみましょう。2017年の統計(総務省家計調査報告)によると、高齢単身無職世帯の家計消費支出は142,198円。ここに社会保険料などの非消費支出も加わります。
住んでいる地域、あるいは持ち家か賃貸かなど、暮らし方によって必要となる生活費は変わりますが、上記平均収入額から考えて、生活費が不足する可能性のある収入20万円未満の人を見てみると53.1%と過半数を超えていることがわかります。老後の備えが大事といわれる理由はここにあるのです。
積み立て式がおすすめ
お金を貯める方法はさまざまあり、どんな方法であってもしっかり貯蓄できるのであれば問題ありません。その中で、比較的貯蓄が苦手な人におすすめしたい王道の方法は、先取り貯蓄です。月の収入から自分で決めた一定の額を貯めていきます。
貯蓄分は初めからなかったものと考え、残りの金額でやりくりしましょう。また、毎月着実に積み立てることができれば、まとまった貯蓄を実現できます。そのためか、イデコやつみたてNISAが人気となっており、イデコの加入者は2018年8月に100万人を突破しました。また、つみたてNISAの口座数は2018年6月末時点で約68万口座となっています。
つみたてNISAの口座を保有している人を年代別で見てみると20歳代が約10万口座で全体の約15%、30歳代が約17万口座で約24%、40歳代が約18万口座で約26%を占めているという状況です。一般NISAでは60歳代、70歳代の比率が高いため、若い人ほど積み立てを利用している様子が窺えます。
多くの人が備えを始めている中、配偶者との協力という手段のないおひとりさまは、より前向きに、意識的に行動を始める必要があります。子供の教育費などの出費がない分、一定のペースで貯蓄を進めやすいのはおひとりさまならではのメリット。時間を味方につけられる積み立て式を活用しましょう。
お金を貯め始めるタイミングの影響
なぜ長い時間をかけてまで老後の備えをする必要があるのか、その理由は日本人の寿命の長さにあります。長生きは、喜ばしいことでありながら老後費用という面では頭を抱える問題ともなりますよね。厚生労働省の「平成29年主な年齢の平均余命」によると、日本人の平均寿命は男性が81.09歳、女性で87.26歳となっています。定年後の長い時間を、お金の不安なく過ごすためには計画的な貯蓄が必要となるのです。
出典:厚生労働省
それでは、お金を貯め始めるタイミングが早かった場合と遅かった場合の違いを具体的な金額でイメージしてみましょう。
まず、一例として、老後の収入が120万円/年(10万円/月)だったと仮定してみます。その場合、先にご紹介した老後支出の平均額との差は約42,000円/月(504,000円/年)。単純に35年分が必要と仮定すると1,764万円です。65歳まで働きながら1,764万円を貯蓄したい場合、必要となる1カ月当たりの貯蓄額は下記のとおり。
- 25歳からの場合は40年で貯める:年利3%の場合で約19,000円/月
- 35歳からの場合は30年で貯める:年利3%の場合で約30,000円/月
- 45歳からの場合は20年で貯める:年利3%の場合で約54,000円/月
19,000/月か54,000円/月かの違いは大きなものですね。それぞれの世代には、それぞれの世代なりの課題がありますが、それでもコツコツ長い期間をかけて貯める方法のほうが無理がありません。
各年代におけるポイント
例えば20代は収入が少なめですが、遊びの誘いなどが多く、なかなか貯金できないと悩みがちです。しかし、少額でもコツコツ貯める癖をつけておくと、浪費してしまうリスクを下げられます。
そして、30代は、だんだん収入が落ち着いてくる頃です。その一方で仕事の責任が増えてストレスもたまりがち。健康で働き続けるためのストレス解消方法を持っておきたいところですが、お金のかからないストレス解消方法を積極的に活用しましょう。
40代は、おひとりさまならではの貯めどきです。家庭を持っている友人が教育費で大変な思いをしている中、マイペースで着実な貯蓄ができるはず。20代、30代のときに思うように貯蓄できなかった人でも、ここで挽回できるかもしれません。
50代では健康面のチェックをしっかり怠らず、着実に貯蓄のラストスパートをかけていきます。体力的な面の衰えなども感じるようになる分、貯蓄の大切さを実感できるときとなるのではないでしょうか。
有利な環境にある人は早くからの資産運用もしておきたい
そして大事なポイントとなりますが、コツコツと貯める方法がよいながらも、早く始められれば毎月の貯蓄額は少なくていいと単純に考える必要もありません。20代のときに思い描いていた働き方を30代、40代、50代と続けられるかどうかは誰にもわからないもの。
実家暮らしなどで使えるお金に余裕のある人は、早くから少し多めに貯蓄する、あるいは資産運用に回すなどしておけば、想定外のライフプラン変更にも柔軟に対応しやすくなります。
参考までに、老後の収入がさらに厳しいケースも計算しておきましょう。収入が国民年金相当分くらいであった場合は779,300円/年(約65,000円/月)となります。老後支出の平均額との差額は約77,000円/月(924,000円/年)です。65歳からの35年分を用意すると考えると3,234万円が必要となります。
- 25歳からの場合は40年で貯める:年利3%の場合で約33,000円/月
- 35歳からの場合は30年で貯める:年利3%の場合で約52,000円/月
- 45歳からの場合は20年で貯める:年利3%の場合で約91,552円/月
消費生活の判断材料にもしながら
老後の収入が少ないと見込まれる人ほど、早くからの貯蓄が大切ですね。老後の備えのための貯蓄を意識するようになると、車を持つか否か、持つとしたら、どのグレードの車にするのか、どのくらいの家賃の住まいにするかといった判断をするときにも役立ちます。
毎年海外旅行へ行くのではなく2年に1度にすればよかった、キャリアに役立つ資格を取っておけばよかったなどの後悔をすることのないように、若いうちから将来に向けてのプランを大まかでも把握しておきたいもの。
また、今回の計算例では65歳以上になっても働くケースを想定していませんでした。しかし、65歳を過ぎても働く人は少なくなく、現役時代よりも負担の軽い仕事をするだけでも毎月の収入を増やせます。上記で紹介したような貯蓄が難しい人は、みずから働き続けるという選択も可能ですね。
理想としては、なるべく早くから無理のない貯蓄計画を立てることが挙げられますが、少し余裕ができてからボーナス分を貯蓄に回す、なるべく長く働き続けるなど、状況に合わせた臨機応変な工夫も効果的です。
ライター
琴子
2級ファイナンシャル・プランニング技能士、AFP。
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