10年ごとの住み替えもおすすめです
賃貸なんて200%住み続けてはいけない
前回は新築マンションを購入しても最後まで住み続けることができるかは運次第(寿命次第)というお話をしました。
新築マンションに最後まで住み続けるのが難しいとしたら、どのような戦略が考えられるのでしょうか。老後の収入を考えると、賃貸という選択肢はさらに現実的ではないということは誰の目にも明らかです。
しかしながら、下記のような記事も目にすることがあります。
家なんて200%買ってはいけない!資産価値ゼロ、賃貸より多額の負担…危険な取引
たしかに郊外の不便な立地で家を買うと、買った瞬間に2割値下がりするというケースはよくあります。しかし、そのようなケースが全てであるかのような論調で家の購入を否定するのはいささか疑問が残ります。では一生賃貸に住み続けた場合のリスクはどのように考えているのでしょうか。老後の少ない年金収入の中から家賃を払い続けていくことが本当に可能なのでしょうか。
このあたりの議論は分譲と賃貸どっちがいいの?(後編)でもお話していますので、参考にしてみてください。
いかに賃貸に住み続けることのリスクが大きいかがお分かりいただけると思います。
人口が減少して空き家が増えるから家賃はタダ同然になるとか過疎地であればあり得るでしょうが、都市部でそんなことは起こりえません。
題名を付けるなら、「賃貸なんて200%住み続けてはいけない!資産価値ゼロ、分譲より多額の負担・・・生活保護にまっしぐら」といったところでしょうか。
今後、戦後の豊かな時代に育った方々が老後を迎えることになります。医療の進歩もますます進み、平均寿命は90歳を超えていくことが予想されています。つまり、多くの方が95歳、100歳まで生きる時代が近づいているということです。そんな時代背景も考慮せず、マネープランの提示をすることなく賃貸住まいを勧めるなんて無責任にもほどがあります。
よく賃貸は収入状況やライフプランに応じて住み替えることができるから、マンションを購入するよりも柔軟性があるという意見を目にします。たしかに賃貸の方が住み替えしやすいのは事実ですが、「現役時代に限って」という前提条件が付くことを忘れてはなりません。人生は老後を迎えたらあとは安泰なのではなく、今後はむしろ現役時代と同じくらい長い老後をいかに生き抜くかということも考えなくてはならないのです。
資産価値の落ちないマンションであれば住み替えが可能
みなさまの周りでも10年前に買ったマンションを購入額とほぼ同額で売却できたという方の話を聞いたことがあると思います。これは極端な例ではなく、都心でマンションを購入した約4割の方は資産価値を落とすことなくマンションの売却に成功しているのです。
購入額とほぼ同額で売却できたということは、毎月のローン返済が丸々貯蓄になったようなものです。諸費用や利息を差し引いてもその資産効果は絶大なものとなります。
例えば、10年前に5000万円で買ったマンションが買値と同額の5000万円で売却できたというケースを考えてみましょう。
話を簡単にするために、条件は以下の設定とします。
<5000万円で購入したマンションの内訳>
- 頭金0円
- 諸費用200万円
- 毎月ローン返済額15万円(うち元本10万円)
- 管理費・修繕積立金2万円
- 固定資産税10万円
- 売却時諸費用200万円(売却時の手数料など)
この10年間で返済した住宅ローンの元本は10万円×12カ月×10年で1200万円になります。つまり、現時点におけるローン残債は3800万円なので、1200万円の売却益を手にすることになります。売却時の諸費用を差し引いても1000万円が手元に残ることになります。つまり、キャッシュフローとして、10年間住んだマンションが1000万円の利益を生み出してくれたということです。
10年間コツコツ貯金して1000万円を貯めるのはなかなか大変なことですが、上記はただ住んでいただけで1000万円の利益をマンションが生み出してくれたということなのです。
しかしこれは売却して初めて手にすることができる売却益であり、ずっと住み続けていたら売却益を手にすることはできません。
また住宅ローンを完済しないとマンションは売却できませんので、手元資金がない場合は売却額がローン残債を上回っている必要があります。
このようなマンションであれば10年で住み替えるたびに売却益を得て、それを次のマンション購入の頭金に充てるといった夢のようなサイクルを実現することができます。このサイクルを3度ほど成功させれば老後も安泰なマンションをキャッシュで手に入れることも夢ではありません。
このサイクルは必ずしも10年である必要はありませんが、これにも合理的な理由があります。
10年ごとに住み替える3つの理由
1つ目の理由は、住宅ローン控除の期間が10年間であることです。
2014年4月1日から2019年6月30日までの間に入居したマンションであれば、最大40万円の控除が10年間にわたって受けることができます。現在の金利水準を考えると、キャッシュで購入するよりも住宅ローンを借りた方が得になるという史上稀に見るお得な制度です。10年間で最大400万円が受け取れるわけですから、できる限りの恩恵は受けたいところです。ただ次も住宅ローンでマンション購入するのであれば引き続き恩恵を受けることは可能ですので、無理に10年間受け続ける必要はありません。
2つ目の理由は、大規模修繕の問題です。
多くのマンションは12年目から大規模修繕に入りますので、マンション全体が工事用のシートに覆われ、居住性が著しく悪化します。できれば12年目の大規模修繕を迎える前にマンションを住み替えた方が気持ちよい環境で生活し続けることができます。
3つ目の理由は、売却のしやすさです。
中古マンションを検討する多くの方は築10年以内を希望しているというデータがあります。駅から徒歩5分以内のマンションは価値が高いのと同じように、築10年以内のマンションも高く売るための必須条件ということなのです。
ではどのようなマンションが資産価値の落ちないマンションなのでしょうか。
10年で住み替えるために
10年でマンションを住み替えるためにはどうすればよいのでしょうか。
ポイントは2つあります。資産価値の落ちないマンションを手に入れることと、購入と売却の時期を見極めることです。
資産価値の落ちないマンションとは評価額の下落が住宅ローン残債の減り方よりも緩やかなマンションのことを言います。住宅ローン残債よりも評価額の方が高ければいつでも売却することができ、売却益も得ることができます。
購入と売却の時期を見極めるとは、できるだけ安い時期に新築マンションを購入し、できるだけ高い時期に中古マンションを売却するということです。マンション相場は常に変動していますので、時期を見極めることも10年で住み替えるための重要なポイントとなります。
資産価値の落ちないマンションの条件
資産価値の落ちないマンションの条件については、住まい探しの条件でもお話していますので、参考にしてみてください。
マンションは9割が立地で決まるといっても過言ではありませんので、できるだけ立地の良い(駅近の)マンションを探します。
特に駅近のタワーマンションは資産価値の落ちないマンションの代表格です。
最近は湾岸エリアでもタワーマンションの開発が活発化していますが、タワーマンションは多くの方が売却益を出すことに成功しています。
タワーマンションについては時期を見極めるだけで容易に売却益が出せるので、住み替えを考えるのであれば有力な選択肢と言えるでしょう。
タワーマンション以外の物件を考えるならば、できるだけ大規模なマンションの方が高値で売りやすい傾向にあります。総戸数が多いと販売側としても完売に多大な労力がかかるため、なるべく価格は抑えようとします。総戸数の目安としては200戸以上であれば大規模物件といえます。
住宅ローン控除のためには、50u以上のマンションを購入する必要がありますが、できるだけ広いマンションを購入した方が高値で売れる傾向があります。このあたりは予算との兼ね合いで検討しましょう。
売却時の内覧を考えると眺望に優れたマンションの方が売却しやすいと言えるでしょう。あと数十万円で眺望が抜けるのであればそこは妥協するべきではありません。
10年ごとの住み替えを考えた時に最も買ってはいけないのは郊外立地のマンションです。郊外立地のマンションはたしかに値段は安いのですが、評価額の下落スピードが住宅ローン残債の下落を上回りますので、売却益を得ることは非常に難しいです。つまり、手元資金がない限りは売却することもできず、ずっと住み続けなければならないのです。
住み替えてなおかつ資産を増やすためには、できる限り都心で利便性の高いマンションを購入することが必須条件なのです。
購入と売却の時期を見極める
マンションの相場は需要と供給によって常に変動しています。中でも中古マンションは市場マーケットが形成されていますので、この傾向は顕著に現われます。
しかし、新築マンションは必ずしも需要と供給によって価格が形成されるとは限りません。
新築マンションの価格は、土地価格+建物価格+ディベロッパーの利益で形成されています。なかでも土地価格は変動が大きく、高値で取得した土地に建つマンションはどうしても割高になってしまいます。また大震災の復興需要やオリンピック特需などで職人が不足している時期などは建物価格も上昇することになります。このように新築マンションは一概に需要と供給で価格が決まっているとは言い難く、それ故に中古マンションとして市場マーケットにさらされた途端、買値から大幅に高い値段で取引されるという事態が生じるわけです。
新築マンションも常に高騰を続けているわけではありませんので、必ず安い時期というのがあります。これは新築マンションの平均購入価格推移を見ることで見分けることが可能です。
例えば下記リクルートの調査を見ると、2012年で新築マンションの平均購入価格は一旦下落していますが、2014年にかけては高騰していることが分かります。
2014年首都圏新築マンション契約者動向調査
中古マンションの価格は新築マンションの遅行指数になっているところもありますので、下記東京カンテイの調査を見ると新築マンションに遅れて上昇していることが分かります。
2014年に新築マンションは過去最高値を付けていますが、中古マンションはまだ安値圏にあることが見て取れます。
中古マンション70u価格月別推移
このように新築マンションの価格推移と中古マンションの価格推移を見比べることで、安い時期に新築マンションを購入し、高い時期に中古マンションを売るということが可能となるのです。
新築マンションは高い時期に購入したとしても、中古マンションの市場マーケットに出てしまえば、安い時期に売り出された新築マンションとの競合となってしまいますので、非常に不利な立場となります。
新築マンションの価格が高騰すると、中古マンションの市場に顧客が流れますので、中古マンションの価格が上がり始めます。中古マンションの価格が上がりきったら、新築マンションにも相対的な割安感が出てきますので、このタイミングが住み替えに適したタイミングといえるでしょう。
このようにマンションを住み替えて利益を積み上げていくためにはそれなりの知識も必要となってきます。ただ以前と比較してネット上には有益な情報が数多く出回っていますので、自身の努力次第では業者や売り手との情報格差も埋めることができ、なおかつ有利な立ち回りをすることも可能なのです。
住まいは一生の問題ですが、一度買ってしまえば安泰という世の中ではなくなっていますので、ぜひとも不動産に関する知識を深め、資産を増やしていくという意気込みを持っていただきたいのです。
自分の老後は自分でなんとかするしかないというおひとりさまは特に、この最も優遇された金融商品(自分が住む不動産)を活かして道を切り開いていきましょう。
おひとりさまライフでは今後もおひとりさまにフィットする新築マンションの情報や中古マンションの売却に関する情報をお届けしていきますので、ぜひ参考にしてみてください。