おひとりさまの個人向け国債入門〜着実・安定的に資産運用しよう〜
はじめに
皆さんのなかには、住宅購入資金や老後の備えなどのために貯蓄をしている人はたくさんいらっしゃると思います。
ただし、超低金利の現在では、銀行に預けていても資産はほとんど増えることはありません。そして、最近メディアでも話題になっている「億り人」を輩出する仮想通貨投資は、値動きが激しすぎるハイリスクの金融商品のため、手を出すのは怖いという人もいらっしゃるでしょう。
そこで今回は、元本保証でありながら、しっかりと金利も受け取れることから、投資初心者でも安心して投資ができる金融商品、個人向け国債をご紹介していきます。
資産運用の必要性
始めに、皆さんのなかでも多くの人が、銀行の普通預金を利用していると思います。ただし、普通預金にお金を預けているだけでは資産はほとんど増えません。それは、日本の金融政策の中心的機関である日本銀行が、経済を下支えするために「マイナス金利」を導入したため、民間銀行は普通預金などの金利を大きく引き下げたからです。
たとえばメガバンクの一強である三菱UFJ銀行の普通預金金利は年0.001%です。つまり100万円預けても年間10円の利息しかもらえません。
これでは将来の住宅購入資金や老後の備え、病気など急な出費を十分にまかなえるとは到底いえないでしょう。そこで普通預金で貯金するだけでなく、資産運用によってしっかり資産を増やしていくことが求められています。
また、これからの10年、20年と長いスパンでみた時、「インフレーション」といって物の値段が大きく上昇した場合、金利の低い普通預金を行っているだけでは資産が増えないため、生活が苦しくなることが予想されます。そのため、資産運用を行って着実にでも資産を増やしていく必要があります。
ただし、投資初心者にとって、急に仮想通貨やFXに投資することはあまりにもリスクの高い投資になってしまいます。そして、資産運用はしたいものの、元本は減らしたくないあという人もいらっしゃるでしょう。
そこで今回ご紹介する金融商品が個人向け国債です。詳しくは次項で説明します。
個人向け国債の魅力に迫る
まずは個人向け国債の特徴をお伝えします。
個人向け国債は、日本国が発行している個人でも購入できる国債のことです。投資の対価として、定期的に利子を受け取ることができ、満期になれば元本の返済を受けることが可能です。つまり、元本が保証された金融商品になります。国が発行し、元本が保証されていますので、投資初心者でも安心して購入することができるでしょう。
そして個人向け国債は、銀行や証券会社など最寄りの金融機関で1万円から購入することができ、購入金額に上限はありません。また、個人間での譲渡や相続も可能のため利便性も高い金融商品です。保有者が亡くなられた場合、相続人の口座へ移管することも可能です。
注目の金利に関しては、年0.05%を最低保証しています。経済環境などによって実勢金利が下落した場合でも、年0.05%の金利が保証されていることから、安心して、そして計画的な資産運用を行うことができます。なお、先ほどお伝えした三菱UFJ銀行の普通預金金利は0.001%。銀行に預金せず個人向け国債に投資することで、これだけの金利差があることが一目でわかると思います。
個人向け国債の利息については、利払い日が年2回、原則として毎年の発行月および発行月の半年後の15日になります。
また個人向け国債は変動金利型の「変動10年」、固定金利型の「固定5年」「固定3年」の3つのタイプが毎月発行されています。
それぞれの商品を説明しますと、まず変動10年は、半年ごとに利率が変わる個人向け国債です。変動金利のため、受け取り金利が増える場合もあります。そして満期は10年です。つまり10年保有することで、元本が目減りすることなく戻ってきます。金利に関しては、基準金利×0.66%で、0.05%は最低保証となっています。
なお基準金利とは、個人向け国債の募集期間開始日の2営業日前において、市場実勢利回りをもとに算出した期間5年または3年の固定利付国債の想定利回りのことを指します。また、市場実勢利回りとは、すでに市場で流通している債券において、売買される価格から算出された利回りのことです。
変動10年に関しては、半年ごとに利率が変わるため、仮に将来物価が上昇したとしても、それに合わせて利率も上昇することから、「インフレに強い」金融商品といえるでしょう。
次に固定5年は、満期まで利率が変わらない個人向け国債です。そのため、満期まで保有した際の投資結果をあらかじめ知ることができます。満期は5年で、金利は実勢金利-0.05%です。こちらも0.05%の最低金利が保証されています。
そして固定3年は、固定5年同様に満期まで利率が変わらない個人向け国債です。満期は3年で、金利は実勢金利-0.03%となります。こちらも0.05%の金利が保証されます。
固定5年や固定3年のような固定金利タイプは、まさに現在のような、デフレで日本銀行による経済下支えのためのマイナス金利政策を導入しているときに有効かもしれません。長期国債の利回りはマイナス0.1%ほどで、銀行の普通預金は0.001%です。他の債券利回りも軒並み大きく低下しています。このようなときには、利率が0.05%で固定された個人向け国債に投資するほうが、相対的に魅力的な利回りを得られることから、賢明な投資判断といえるでしょう。
個人向け国債の商品性
なお、8月募集中の個人向け国債を参照しますと、変動10年は利率が0.09%、固定5年と固定3年はともに利率が0.05%となっています。
個人向け国債に投資することで、これまで銀行預金しかしてこなかった人にとって、ペイオフ対策にもなるでしょう。
まず、皆さんが預けたお金は預金保険制度の対象となります。これは、万が一預金した金融機関が破綻したとしても、預金保険機構が直接保険金を支払うことになります。このことを「ペイオフ」と呼びます。
ただし、1金融機関1預金者あたりの元本1,000万円までと、その利息などが保護の対象となります。そのため、金融機関に対するリスク分散の観点から、元本が保証され普通預金より金利の高い個人向け国債に、預金の一部でも移すことは賢明な判断といえるでしょう。
なお、個人向け国債は証券が発行されないペーパーレスの国債となります。個人向け国債を購入した場合は、取引金融機関が発行する取引残高報告書などで保有額などを確認することができます。
たくさんの魅力的な特徴がある個人向け国債ですが、一方で注意点もあります。次項で注意点を詳しく解説していきます。
個人向け国債の注意点を把握しよう
個人向け国債の注意点としては、原則1年経過しないと途中換金できないことです。急病で手術費用が高額となった場合や、または海外留学費用を支払うことになった場合に、購入した個人向け国債が発行後1年経過していないと、原則的に途中換金できないため、これらの出費に充てることは難しいので注意してください。
なお中途換金した場合の換金額は、以下の計算式となります。
額面金額+経過利子相当額-中途換金調整額(直前2回分の各利子相当額×0.79685)
個人向け国債を購入して資産運用を始めよう!!
ここからは、実際に個人向け国債の購入手順をご紹介します。個人向け国債は毎月発行となりますが、募集期間が決まっていますので、事前に財務省の個人向け国債のページなどで確認しましょう。
ちなみに、8月の募集期間は8月6日から31日までとなっており、実際の発行はその翌月です。また、それぞれの金融機関では、個人向け国債の販売促進のため、個人向け国債の購入金額に応じたキャッシュバックプレゼントなど様々なキャンペンーンを実施しています。それらのキャンペーン実施時期に合わせて購入することで、少しでもお得な投資になるかもしれません。
個人向け国債の購入手順
@最寄りの個人向け国債取り扱い金融機関をチェックします
(8月募集の取り扱い金融機関は1,033機関あります)
A口座開設には、本人確認証や印鑑などを用意しましょう
(本人確認ができる運転免許証や健康保険証などと、マイナンバーが確認できる書類、印鑑などが必要です)
B最寄りの金融機関で口座開設します
C個人向け国債の購入申し込みをします
なお、実際に個人向け国債を購入した人の本音も探りましょう。
財務省が行ったアンケートによると、個人向け国債を買った理由の約58%が、「国が発行していて安心だから」という結果が出ています。やはり、発行元が信頼のおける機関に投資をしたいのは誰しも一緒だと思います。
また、購入した個人向け国債の種類は、変動10年が約37%と一番多くなっています。これは、今後10年で物価が上がり、金利も上がることを想定して、変動金利タイプの変動10年を購入することで、受け取れる金利が増えることを期待しているのが伺えます。
そして個人向け国債を購入した人のリピート率に関しては、約20%の人が4回以上にわたり個人向け国債を購入し続けている結果となりました。また約31%の人が2、3回のリピートとなっており、以上から半数以上の人が個人向け国債を繰り返し購入していることになります。これは、やはり個人向け国債が安心・安全に投資できる金融商品であり、しっかりと金利も受け取れることが、リピート率に表れているといえるでしょう。
最後となりますが、個人向け国債は元本が保証されているうえ、普通預金より高い金利を受け取ることができます。世の中の経済情勢に応じて、変動金利にするのか固定金利にするのか、より魅力的なほうを選択することもできます。資産運用の第1歩を踏み出そうとしている人は、ぜひ個人向け国債で投資のスタートを切ってください。