個人年金は長生きに備える保険
個人年金とは
個人年金保険とは、民間の保険会社が販売する保険商品のことです。
毎月保険料を支払うことで契約時に定めた年齢から一定金額の年金が支払われる仕組みとなっています。
公的年金の不足を補うための老後資金として検討されるのが一般的です。
個人年金は必要?
老後の備えに個人年金はマストと考えてよいでしょう。
利回りが低いから魅力に乏しいと言う方もいますが、個人年金はあくまで老後のリスクに備えるための保険なのです。たしかに個人年金には貯蓄性もありますので、利回りが高いに越したことはないのですが、利回りが低いから投資信託など他の運用商品を考えた方がよいとかそういう意見は本質的に間違っています。
投資信託や定期預金など他の金融商品は個人年金と比べると流動性が高い(いつでも解約できる)ため、老後の備えとしての資金のはずがマンション購入の資金として使ってしまったり、結婚費用として使ってしまったりと本来の目的と外れた使い方をしてしまう可能性が高くなってしまいます。
よほどマネー意識の高い方であればそのような心配もないでしょうが、人間の意志はとても弱いものです。老後の資金は他の資金とは完全に分けた形で準備するのが望ましいでしょう。
また個人年金であれば年末調整で保険料控除ができますので、個人年金自体の利回りが低くても保険料控除を考えると非常に優秀な金融商品といえます。
その他長生きをすればするほど得になる終身年金が利用できるなど他の金融商品にはないメリットが多くあります。
鉄の意志で老後資金を準備できる方以外は個人年金の加入を検討しましょう。
個人年金は長生きに備える「保険」と考えてください
個人年金を選ぶポイント
個人年金にもいろいろ種類はありますが、基本的には下記2種類の加入を検討しましょう。
10年確定型の個人年金
一生涯受け取れる終身タイプの個人年金
個人年金を選ぶ際のポイントは2つあります。
一つ目は保険料控除が受けられるタイプの商品であること。
もうひとつは長生きに備えるための商品であることです。
年金支払い開始までの空白期間に備える
個人年金の一つ目は10年確定型の確定年金を選択するとよいでしょう。
公的年金の支払い開始年齢は現在の65歳から67歳→70歳へと順次引き上げられることが予想されています。それに伴って雇用も60歳から65歳へと延長する動きが出ていますが、今後も年金支払開始年齢と定年との間にギャップが生じる可能性は大いにあると考えられます。そのための対策として10年確定型の個人年金をお勧めいたします。
10年確定型の個人年金は文字通り、10年間に渡って個人年金の支払いを受けることを契約時に確定している年金のことをいいます。支払い開始年齢も契約時に定めることになりますが、一般的には60歳または65歳とすることが多いです。支払い開始年齢を遅くした方がもらえる年金額は多少多くなります。65歳まで働くと決めている方は65歳を受け取り開始にしてもよいかと思いますが、人生どうなるか分からない部分もありますので、保険の意味も込めて60歳を支払い開始とするのも一案です。
公的年金の支払い開始年齢が順次引き上げられるといってもさすがに70歳を超えてくることは考えづらいので、60歳から70歳まで個人年金を受け取り、70歳から公的年金を受け取れるような環境を作っておけば少しは老後の安心要素になることでしょう。
また大切なポイントとして、10年確定タイプの個人年金であれば保険料控除の対象となりますので、税制上のメリットがある点も大きいです。
長生きした場合に備える
公的年金の支払い開始までの空白期間に備えたら、次は想定以上に長生きした場合に備えて終身タイプの個人年金にも加入するとよいでしょう。
日本人の平均寿命は2015年時点で男性は80歳、女性は86歳となっています。これは医学の進歩もそうですが、栄養状態が改善していることも大きいと言われています。現在の80代、90代の方が生まれた頃は満足な食事もできず、今より栄養状態もずっと悪かったわけです。現在の60代の方と30年前の60代の方とを比較すると驚くほど若く健康になっていることに気が付くことでしょう。日本が先進国の仲間入りを果たし、栄養豊富な食事と医学の発達によって平均寿命が年々伸びてきたということなのです。
現在の20代、30代の方は生まれた頃から栄養豊富な食生活を送っていますので平均身長も高いですし、健康面でも至れり尽くせりの対応を受けてきました。実際内閣府の試算では、今後2060年には女性の平均寿命が90歳を超えると見込まれているのです。平均寿命が90歳を超えるということは多くの方が90歳よりも長生きすることを意味しています。
将来推計人口でみる50年後の日本
20代、30代のおひとりさまは85歳を老後のターゲットに考えるのではなく、95歳もしくは100歳まで生きることを想定したプランを考えておく必要があるということなのです。
そこで想定以上に長生きした場合に備えて終身タイプの個人年金が必要になってくるというわけです。
終身タイプの個人年金は生きている限り年金が受け取れますので、長生きすれば得ですが、長生きできなかった場合は元本割れしてしまう恐れがあります。一般的には85歳より長生きすればするほど返戻率が上がる傾向にあります。
よく元本割れを気にして終身タイプの個人年金を避ける方がいますが、生命保険をかける際に元本割れを気にする人がいるでしょうか。
生命保険はあくまで死んだ時のリスクに備えるための保険なので元本を気にする方はほとんどいないと思います。それと同じで終身タイプの個人年金はあくまで長生きした場合のリスクに備えるための「保険」なのです。支払期間確定型の個人年金は予め返戻率が決まっていますので、例えば120%の返戻率であれば将来的に数十万円の利益が確定されています。しかし、それが何だというのでしょうか。数十万円で長生きのリスクがカバーできるのでしょうか。
終身タイプの個人年金であれば生きている間はずっと受け取ることができますので、90歳を超えてくると返戻率も驚くほどの数字になることでしょう。
本来保険とは万が一の何かに備えるためのものなので、まさに終身タイプの個人年金は長生きに備えるための保険として、おひとりさまライフには欠かせないアイテムなのです。
また大切なポイントとして、終身タイプの個人年金も保険料控除の対象となりますので、税制上のメリットを享受することができます。
個人年金は将来の自分への仕送りとも言われています。そこまで大きな金額ではないにしても、少しでも老後の生活をよくしたいのであれば、今のうちから備えておいて損はないと思いませんか?
保険料控除について
10年確定型および終身タイプの個人年金はいずれも保険料控除の対象となります。
保険料控除の対象とするためには「個人年金保険料税制適格特約」という特約を付ける必要がありますので、契約時に保険会社の人に確認するとよいでしょう。
個人年金保険料控除の上限は年間4万円なので、一般保険料控除の枠が余っている方はどちらか一方に特約を付け、もう一方には特約を付けずに一般保険料控除として申請することで保険料控除の対象額を増やすことができます。このあたりも保険会社の方に確認するといろいろと教えてもらえるかと思います。
保険料控除のやり方は年末調整時に保険会社から送られてきた保険料控除証明書を貼って提出するだけなのでとっても簡単です。
税制の優遇を受けながら賢く老後の備えを行っていきましょう。