分譲 VS 賃貸論争に終止符
これまで分譲マンションの生涯コストについて見てきました。今回はこれまでの集大成として、分譲マンションと賃貸マンションの生涯コストをあらゆる条件で比較してみたいと思います。
今後の平均寿命の予測から、多くの人は95歳まで生きるものと思ってください。少なくとも95歳までは住まいを確保する必要があるのです。老後のことも考えながら住まいの生涯コストを考えると、これまでとは違った見え方になるはずです。
前提条件
- 35歳から60年間ずっと賃貸に住み続けると仮定
- 間取りは1K〜1LDK程度(20u〜35uぐらい)
- 更新料は2年ごと家賃の2か月分
- 15年ごとに引っ越しするものとする(計4回)
- 引っ越し費用は10万円と仮定
- 敷金・礼金は家賃の4か月分
家賃6万円の賃貸に住み続けた場合
- 家賃総額:4,320万円
6万円×12×60=4,320万円
- 更新料総額:360万円
6万円×2か月分×30回=360万円
- 引っ越し費用総額:40万円
10万円×4回=40万円
- 敷金・礼金総額:120万円
6万円×4月分×5回=120万円
- 60年間トータルコスト:4,840万円
4,320万円+360万円+40万円+120万円=4,840万円
- 毎月平均コスト:67,222円
4,840万円÷60年÷12カ月=67,222円
家賃7万円の賃貸に住み続けた場合
- 家賃総額:5,040万円
7万円×12×60=5,040万円
- 更新料総額:420万円
7万円×2か月分×30回=420万円
- 引っ越し費用総額:40万円
10万円×4回=40万円
- 敷金・礼金総額:140万円
7万円×4月分×5回=140万円
- 60年間トータルコスト:5,640万円
5,040万円+420万円+40万円+140万円=5,640万円
- 毎月平均コスト:78,333円
5,640万円÷60年÷12カ月=78,333円
家賃8万円の賃貸に住み続けた場合
- 家賃総額:5,760万円
8万円×12×60=5,760万円
- 更新料総額:480万円
8万円×2か月分×30回=480万円
- 引っ越し費用総額:40万円
10万円×4回=40万円
- 敷金・礼金総額:160万円
8万円×4月分×5回=160万円
- 60年間トータルコスト:6,440万円
5,760万円+480万円+40万円+160万円=6,440万円
- 毎月平均コスト:89,444円
6,440万円÷60年÷12カ月=89,444円
家賃9万円の賃貸に住み続けた場合
- 家賃総額:6,480万円
9万円×12×60=6,480万円
- 更新料総額:540万円
9万円×2か月分×30回=540万円
- 引っ越し費用総額:40万円
10万円×4回=40万円
- 敷金・礼金総額:180万円
9万円×4月分×5回=180万円
- 60年間トータルコスト:7,240万円
6,480万円+540万円+40万円+180万円=7,240万円
- 毎月平均コスト:100,555円
7,240万円÷60年÷12カ月=100,555円
家賃10万円の賃貸に住み続けた場合
- 家賃総額:7,200万円
10万円×12×60=7,200万円
- 更新料総額:600万円
10万円×2か月分×30回=600万円
- 引っ越し費用総額:40万円
10万円×4回=40万円
- 敷金・礼金総額:200万円
10万円×4月分×5回=200万円
- 60年間トータルコスト:8,040万円
7,200万円+600万円+40万円+200万円=8,040万円
- 毎月平均コスト:111,666円
8,040万円÷60年÷12カ月=111,666円
家賃11万円の賃貸に住み続けた場合
- 家賃総額:7,920万円
11万円×12×60=7,920万円
- 更新料総額:660万円
11万円×2か月分×30回=660万円
- 引っ越し費用総額:40万円
10万円×4回=40万円
- 敷金・礼金総額:220万円
11万円×4月分×5回=220万円
- 60年間トータルコスト:8,840万円
7,920万円+660万円+40万円+220万円=8,840万円
- 毎月平均コスト:122,777円
8,840万円÷60年÷12カ月=122,777円
60年間トータルコスト比較
60年間のトータルコストで比較してみました。
トータルコストで見ると、それなりに妥当な結果という感じがします。
<分譲と賃貸の60年トータルコスト>
家賃6万円賃貸 |
4,840万円 |
家賃7万円賃貸 |
5,640万円 |
2000万リフォーム |
5,691万円 |
3000万新築 |
6,167万円 |
家賃8万円賃貸 |
6,440万円 |
2700万リノベーション |
6,521万円 |
家賃9万円賃貸 |
7,240万円 |
4000万新築 |
7,352万円 |
家賃10万円賃貸 |
8,040万円 |
5000万新築 |
8,592万円 |
家賃11万円賃貸 |
8,840万円 |
分譲 VS 賃貸 毎月コスト推移比較
トータルコストで比較すると分譲と賃貸の違いが見えにくいので、ここでは分譲と賃貸でどのようなコスト推移をするのかを見てみましょう。老後を境に、分譲マンションはコストが一気に落ちていますが、賃貸は生涯変わらないということが見て取れます。
分譲マンションの毎月コスト推移
分譲マンションの毎月コスト推移をもう少し詳しく見てみましょう。住宅ローンの支払いを終えるまでは、コストに見合った支払額となっていますが、住宅ローン支払い後は毎月コストが一気に落ちていることが見て取れます。修繕積立額の違いにより、新築マンションの方が中古マンションよりも老後の支払いは有利であることが分かります。
賃貸マンションの毎月コスト推移
賃貸マンションの毎月コスト推移をもう少し詳しく見てみましょう。分譲マンションと異なり、老後も一貫して毎月コストが変わることはありません。老後もこのコスト負担に耐え続けることができるかは少し心配です。
分譲マンションに軍配
60年間のトータルコストで見れば賃貸の方が安いケースもありますが、本当にトータルコストだけで決めてよいのでしょうか。
分譲はよく家賃の先払いと言われます。分譲は収入のある現役時代に家賃の大部分の支払いを済ませ、老後は管理費と修繕積立金のみの支払いで済みます。賃貸の場合はそのような柔軟な支払い方をすることはできませんので、住み続ける限りは生涯一定の家賃支払いを続ける必要があります。両者の差が顕著に表れるのはやはり老後になってからなので、老後の安定した生活を考えると、やはり賃貸という選択肢はあまりおすすめできません。
賃貸で苦しくなったら住み替えればよいとか様々な意見もあることでしょう。しかし、住み替えるにもそれなりの費用が掛かりますし、収入が少なく保証人もいない老後時代に確実に住み替えできる保障はありません。また分譲と賃貸では、同じコストを支払っていても、広さやグレードなど住み心地も大きく異なります。
住空間はただ住めればよいのではなく、人生の多くの時間を過ごす場所なのですから、やはり住み心地というのは人生の満足感に大きな影響を与える要素となります。
人生を長いスパンで見た時の経済合理性からも、充実したおひとりさまライフを送る空間としても、分譲マンションの方が有意な人生を送れる可能性が高いということです。老後になって後悔する前に、もう一度住まいについて検討してみてはいかがでしょうか。
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