3000万新築マンションの場合

3000万新築マンションの60年間をシミュレート
2700万リノベ VS 2000万リフォームでは、築20年の中古マンションを購入し、リノベーションした場合としなかった場合の資産価値の推移やランニングコストの算出を行いました。
中古マンションと比較して新築マンションはどのような資産価値やコストの推移を示すのでしょうか。今回は3000万の新築マンションを購入した場合について見てみることにしましょう。
前提条件
- 35歳で新築マンションを3000万円で購入
- 間取りは1LDKの52.8u(16坪)
- 3000万円を銀行ローン(年利1%)35年返済で借入
⇒月々返済額84,685円(ボーナス払いなし)
- 管理費10,000円
- 修繕積立金5,000円(10年ごとに5,000円上がると想定)
- 固定資産税12万円/年(5年目まで半額、30年目以降は10万円と想定)
一般にマンションの坪単価は毎年4万円ずつ減少すると言われています。これまでと同様に、築20年まで毎年4万円減少し、それ以降は毎年1万円減少していくものとします。
ちなみにこの物件の坪単価は3000万円/16坪=188万円ということになります。リノベマンションの新築時想定坪単価は205万円でしたから、立地はややリノベマンション優勢かもしれません。
10年後(築10年目)の資産価値は?
- 住宅ローン残高:2,247万円
- 10年間のランニング費用:12,862,200円
- 毎月の費用:107,185円
- 坪単価:148万円
- 物件評価額:2,368万円(推定)
当初残高3,000万円から753万円減少
(84,685円+10,000円+5,000円)×12カ月×10年+6万円×5年+12万円×5年
12,862,200円÷10年÷12カ月
188万円−4万×10年
148万円×16坪=2,368万円
この時点で売却すると手数料を含めてほぼトントンの収支になる想定です。
2年ごとの更新料を考えると月10万円の賃貸に住んでいたのとほぼ変わらない支出額だったという計算です。
20年後(築20年目)の資産価値は?
- 住宅ローン残高:1,415万円
- 10年間のランニング費用:13,762,200円
- 毎月の費用:114,685円
- 坪単価:108万円
- 物件評価額:1,728万円(推定)
当初残高3,000万円から1,585万円減少
(84,685円+10,000円+10,000円)×12カ月×10年+12万円×10年
13,762,200円÷10年÷12カ月
148万円−4万×10年
108万円×16坪=1,728万円
この時点で売却すると手数料を考慮してもややプラスの収支が期待できます。新築マンションは何といっても売却の自由度が高いことが大きな価値と言えるでしょう。
毎月の費用で見ると、引き続き月10万円の賃貸に住んでいたのとほぼ変わらない支出額だっという計算です。
30年後(築30年目)の資産価値は?
- 住宅ローン残高:495万円
- 10年間のランニング費用:14,362,200円
- 毎月の費用:119,685円
- 坪単価:98万円
- 物件評価額:1,568万円(推定)
当初残高3,000万円から2,505万円減少
(84,685円+10,000円+15,000円)×12カ月×10年+12万円×10年
14,362,200円÷10年÷12カ月
108万円−1万×10年
98万円×16坪=1,568万円
築30年で売却した場合、住宅ローン残高がかなり減少していますので、1000万円程度の売却益が見込めるかもしれません。これまでの中古マンションのケースでは30年後に売却するという選択肢はほぼ見込めない状況でしたから、そういった観点では新築マンションを購入することのメリットを感じていただけるかと思います。
修繕積立の費用もこれまでの中古マンションと比較するとまだ低い水準と言えるでしょう。
40年後(築40年目)の資産価値は?
- 住宅ローン残高:0万円
- 10年間のランニング費用:9,681,100円
- 毎月の費用:80,675円
- 坪単価:88万円
- 物件評価額:1,408万円(推定)
当初残高3,000万円
84,685円×60カ月+(10,000円+20,000円)×12カ月×10年+10万円×10年
9,681,100円÷10年÷12カ月
98万円−1万×10年
88万円×16坪=1,408万円
購入して40年後ということは、35歳で購入したとして75歳になっているということです。途中で住宅ローンも完済し、月々の費用負担はぐっと少なくなります。
驚くべきことにこの時点では7万5千円の賃貸とほぼ同額のコスト負担ということなのです。修繕積立がまだそこまで高騰していないため毎月のランニング費用は中古物件に比べてかなり有利なものとなります。
50年後(築50年目)の資産価値は?
- 住宅ローン残高:0万円
- 10年間のランニング費用:5,200,000円
- 毎月の費用:43,333円
- 坪単価:78万円
- 物件評価額:1,248万円(参考)
当初残高3,000万円
(10,000円+25,000円)×12カ月×10年+10万円×10年
5,200,000円÷10年÷12カ月
88万円−1万×10年
78万円×16坪=1,248万円
購入して50年後でも新築物件であればまだまだ現役です。35歳で購入したとして85歳になっているわけですが、この年齢で毎月のコスト負担が4万円ちょっとというのは非常に助かることと思います。中古物件と比較してこのあたりの差が新築のメリットと言えるでしょう。また、賃貸に住み続けた場合と比較しても驚きのパフォーマンスを見せることでしょう。そのあたりの比較ものちのち行っていきます。
60年後(築60年目)の資産価値は?
- 住宅ローン残高:0万円
- 10年間のランニング費用:5,800,000円
- 毎月の費用:48,333円
- 坪単価:68万円
- 物件評価額:1,088万円(参考)
当初残高3,000万円
(10,000円+30,000円)×12カ月×10年+10万円×10年
5,800,000円÷10年÷12カ月
78万円−1万×10年
68万円×16坪=1,088万円
さすがに新築とはいえ、築60年はなかなかの領域です。しかし、新耐震基準以降に建てられた物件であれば60年以降も十分に住み続けられるものと考えられます。
年齢も95歳に差し掛かり、これ以上住居に費用はかけられない年代です。毎月のコスト負担も5万円未満ですし、新築物件であればなんとか最後まで逃げ切れるかもしれません。
60年間のトータルコスト
新築3000万マンションのトータルコスト:61,667,700円

3000万円で購入した新築マンションのトータルコストは6,167万円と購入価格の約2倍程度となりました。中古マンションのトータルコストが購入価格の3倍近かったことを考えると意外に割安な印象です。この差異がどこから生まれるかというと、やはり修繕積立金の額が中古マンションと比べて低く抑えられていたというところでしょう。
次回により詳細は比較を行いますが、初期費用の安さに目を奪われて中古マンションを購入したものの、トータルコストで見ると少し高めの新築マンションと実は変わらなかったということも十分に考えられそうです。
毎月コストの推移

やはり住宅ローンを払い終える35年目以降は毎月かかる費用もぐっと低下しています。老後の全盛期には5万円を切る価格となり、中古マンションと比較するとその優位性は一目瞭然です。しかし、とはいえ、毎月5万円程度の費用が掛かってしまうのも事実なのです。将来の年金額を考えると毎月5万円の支出はなかなか大きな金額と言えるでしょう。
そこまで考えるとやはりマンションは長期に住むのではなく、ある程度の期間で住み替えるのが最も優れた戦略と言えるのかもしれません。そのあたりのお話については、10年ごとの住み替えもおすすめですで詳しく説明していますので、参考にしてみてください。
評価額の推移

※購入から40年後(築40年)に売却できるかは不明のため参考表示としています
10年後に売却した場合、売却手数料等を考えるとほぼトントンの収支が想定されます。20年目で売却した場合は最大で200万円程度のプラスが見込めそうです。30年目で売却すれば住宅ローンとの差し引きで1000万円程度のプラスになる可能性はありますが、年齢も65歳と高齢に差し掛かっていますので、30年目以降の住み替えは慎重に考えた方がよさそうです。
3000万円の新築マンションとなると郊外立地の場合が多くなるかと思います。郊外マンションは都心マンションと比較して資産価値の下落が早い傾向にありますので、一概に新築マンションをお勧めするということではありません。同じ価格帯であれば都心立地の中古マンションの方が有利なケースもあります。新築、中古に限らず、資産価値の落ちないマンションを見極める目を持てるように頑張りましょう。
晩年に強さを発揮する新築マンション
新築マンションの入居当初は修繕積立金が低く抑えられているため、中古マンションと比較するとトータルコストは安価な傾向にあります。老後に入ってからの住宅コストが抑えられるのもとても助かることでしょう。新築マンションであれば人生の最終局面を迎えても築60年ですから、最後まで逃げ切れる可能性が高いです。
途中で住み替えるというリスクを取りたくない方には中古マンションよりも新築マンションを強くお勧めいたします。住環境を重視するのであれば間違っても賃貸に住み続けるという選択はしないようにしましょう。老後を迎えるころに猛烈な後悔に襲われる可能性が高いです。
次回(新築マンション VS 中古マンション)は、新築マンションと中古マンションの比較についてもう少し詳しく見てみることにしましょう。
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