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リノベマンションは修繕積立に注意

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リノベーションとは

 

リノベーションとは、既存の建物に大規模な改修工事を行い、機能や性能を向上させたり付加価値を与えることを言います。
同じような言葉に「リフォーム」がありますが、リフォームとは古くなった建物や設備を修復して元の状態に戻すことを言います。その建物を新築の状態に戻すのがリフォームで、新築の状態よりも付加価値を与えたものがリノベーションということです。

 

最近流行りのリノベーションマンション

 

最近中古マンションをリノベーションして、住みやすくなったマンションを購入するということが増えているようです。
リノベーションされたマンションは新築と見まごうばかりの内装に仕上がりますので、割高な新築物件を買うよりもお得感が強いようです。

 

新築マンションを購入するよりも費用が抑えられて自分仕様のマンションが手に入るわけですから、一見メリットが多そうに見えますが、人生を長いスパンで見た時に本当に安いと言えるのか考えてみましょう。

 

リノベーションマンションが本当に安いのかを考える

 

例えば、築30年2000万円で販売されている中古マンションを700万円の費用をかけてリノベーションした場合について考えてみましょう。
リノベーション会社が提携している専用ローンを使えば35年の長期で借りることができ、金利も2%程度と新築には及びませんが割安な水準です。

 

ここで中古マンション本体の費用2000万円は提携ローンの2%、35年の条件で、リノベーションの費用700万円は諸費用ローンの2.475%、35年の条件で借りたとしましょう。
すると、月々の返済額はマンション本体部分が約6.5万円、リノベーション部分が2.5万円となり、トータルでの月々の返済額は約9万円ということになります。

 

月々の返済額が9万円で収まるのであれば、新築物件を購入するよりもリーズナブルで満足度の高いマンション購入ができるように思えます。
しかし、上記の条件には様々なワナが隠されています。では、どのようなワナが隠されているのでしょうか。

 

修繕積立金の存在

 

月々の返済額9万円というのはあくまで住宅ローンの返済額のことであり、その他に管理費、修繕積立金、固定資産税などのランニングコストがかかってきます。
これらの費用は物件ごとに変わってきますので一概には言えませんが、築30年60u程度の物件であれば管理費1万円前後、修繕積立金2万円〜3万円、固定資産税10万円〜15万円/年ぐらいが目安になるかと思います。

 

中でも修繕積立金の存在が一番厄介です。
修繕積立金は、主に共用部分の修繕工事・改修費用に充てられるもので、新築マンション販売時には30年の長期間にわたって積立計画が立てられています。
ただし、新築マンション販売時の修繕積立計画は購入者が負担を感じない程度に安く抑えられており、5年または10年ごとに修繕積立金の額が引き上げられるのが一般的です。

 

一般的なマンションは12年ごとに大規模な修繕工事を行います。つまり、築12年、24年、36年、48年・・・の年に大規模修繕を行うわけです。
排水管や電気設備の交換など費用のかさむ大規模な工事については30年ごとに行われますので、当初の計画案には30年目までの工事計画が記載されているのです。

 

そして恐ろしいことに、30年にわたって積み立てた修繕積立金は30年目の修繕工事をもってゼロになる計算となっています。つまり、新築販売時には30年間の修繕費用を計算して月々の修繕積立金額を算出しているということです。
さらに当初安く設定している分、5年ごとに値上げするか、もしくは相当額の一時金を徴収しないとつじつまが合わないような計算になっています。

 

当初の計画には30年目以降の大規模修繕工事の費用は含まれていませんので、この費用も考慮に入れると修繕積立金の大幅な値上げは避けられないですし、一時金の徴収も現実味を帯びてきます。

 

修繕積立金の額が不足すれば、マンションの所有年数に関係なく一時金を徴収されますので、築年数の古いマンションを購入するということはマンションの修繕計画に途中から参加するという意識を持つ必要があります。

 

A男さん(50)が住むマンションは築20年を超える。このほど大規模な修繕工事をすることになったが、修繕積立金が工事費を大きく下回っていることが分かった。足りない分は「一時金」としてマンションの住人から徴収する可能性があるという。A男さんの負担額は数十万円。3年前に中古で購入したA男さんは納得がいかないでいる。

(中略)
いずれにしても管理組合総会で最終的な判断をすることになります。仮に総会で一時金を徴収すると決議をした場合は、反対している人も従わなければなりません。
また、後から修繕費を値上げしたり、一時金を徴収したりする場合、マンションの所有年数は勘案されません。そのためA男さんも「新築時から住む人と同じ基準で負担する義務を負うことになる」と菅俊治弁護士はいいます。

出典 マンション修繕積立金が足りない 負担こう決まる|日経電子版

 

年々高騰する修繕積立金と一時金

 

築30年のリノベマンションを購入し、36年目の大規模修繕は何とか一時金支払いでしのいだとしましょう。30年を過ぎた後の修繕積立金の額は増加の一途をたどり、4〜5万円/月になっていても不思議はありません。その修繕積立金も支払いながら次に48年目の大規模修繕を迎えることになります。住み始めてから18年目のことです。築48年ともなるといろいろなところに不具合が生じ、大規模修繕の費用も高騰するかもしれません。そうなるとさらなる一時金の支払いが求められ、金銭的負担は大きくなる一方です。

 

35歳でリノベマンションを購入したとすると、18年目でもまだ53歳ですから、まだまだこのマンションにはお世話になる必要があります。ここで次に迎える60年目の大規模修繕が最後の追い打ちをかけることになるでしょう。12年ごとの大規模修繕工事と30年ごとの大規模設備交換が一度にやってくるのが60年目なのです。この時マンションを購入して30年、65歳になっている計算です。修繕積立の費用が足りず、多額の一時金を求められたとしても支払いに応じるのは難しいかもしれません。

 

リノベマンションの売却は困難

 

そんなに修繕積立金が高騰するなら途中で売ってしまえばいいと思うかもしれません。しかし、築年数の古いマンションはそう簡単には売れないのです。

 

税制上、マンションの耐用年数は47年と決まっています。銀行はこの耐用年数を目安に住宅ローンの審査を行います。つまり、築30年のマンションであれば20年ぐらいが借入期間の目安となりますし、築40年ともなると住宅ローンの貸し出しは難しいことでしょう。また、中古マンションの場合は、その物件を担保として住宅ローンの貸し出しを行いますので、築年数の古いマンションの場合は頭金の積み増しを求められる可能性が高いです。

 

そうなると、48年目の大規模修繕を前にマンションを売却しようと考えても、住宅ローンを組んで購入することはできない物件ということになります。これでは売却は極めて困難ということが予想されます。
売却ができないなら賃貸に出せばよいのでは?と思われるかもしれませんが、賃貸に出したとしても物件を所有している限り、修繕積立金の呪縛から逃れることはできないのです。

 

リノベーションマンション購入時はリノベーション会社と銀行が提携しているので35年ローンを組むことも可能ですが、マンション売却時には純粋な築年数で審査されてしまいますので、住宅ローンを利用した購入は難しいということになるのです。

 

経済合理性を考えるとおすすめできません

 

以上のようなことから、経済合理性を考えるとリノベーションマンションはおすすめできないという結論に達します。

 

なぜ中古マンションにリノベーションが必要なのかというと、間取りが今の時代に合わなかったり、内装が古かったりというところが根本原因なので、2000年以降に建てられたマンションであればそもそもリノベーションをする必要もありません。

 

新築マンションはどれも画一的だからリノベーションで個性を表現しようという宣伝文句もありますが、画一的であるからこそ売却しやすく、賃貸に出しやすいのであって、個性的なマンションでは買い手も限られてしまいます。
人生は長いスパンで考える必要がありますので、一時の感情に流されてリノベマンションを購入してしまい、後で手詰まり感でいっぱいになってしまうというのは避けたいところです。

 

リノベマンションを購入するということは、外見が実年齢よりも大幅に若返った人と結婚するようなものなのです。外見は20代に見えても中身の実年齢は60代なので、定期的なメンテナンスは欠かせませんし、若い人に比べると病気にかかるリスクも高くなってしまいます。そのようなことを見越したうえで結婚するのであればよいのですが、十数年後にこんなはずではなかったと後悔するのは避けていただきたいのです。

 

安物買いの銭失いにならないよう十分な考慮を重ねたうえで検討する必要があります。

 

条件次第ではリノベマンションも選択肢のひとつに

 

今後もリノベーションブームは続いていくことが予想されますので、うまく立ち回ることができるならばリノベマンションも選択肢のひとつとして考えてもよいかもしれません。

 

マンションの資産価値は一般的に20年目まで下落の一途をたどりますが、20年目以降は下げ止まる傾向にあります。例えば、築20年前後のマンションを購入し、リノベーションして価値を高め、売却ができるぎりぎりのラインである35年を目途に売却するパターンを考えるならば一考の余地があります。うまくいけば、賃貸と同程度の負担でお気に入りのマンションに住み続けることができるかもしれません。

 

ただ、経済合理的にはリスクが高いことに変わりはありませんので、物件価格の安さだけに惑わされず、長期的なコストも視野に入れてリノベマンションを検討するようにしましょう。

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