築20年リノベマンションの場合
築20年で資産価値は下げ止まる
一般的にマンションの資産価値は築20年まで下落の一途をたどり、20年目以降は下落が緩やかなものになると言われています。
では、築20年のマンションをリノベーションして購入するのであれば経済合理性があるのではないでしょうか。早速検証してみましょう。
前提条件
- 35歳で築20年の中古マンションを2000万円で購入
- 間取りは1LDKの52.8u(16坪)
- 700万円かけてリノベーション
- 2700万円を提携ローン(年利1%)35年返済で借入
⇒月々返済額76,217円(ボーナス払いなし)
- 管理費10,000円
- 修繕積立金15,000円(10年ごとに5,000円上がると想定)
- 固定資産税12万円/年(30年目以降は10万円と想定)
一般にマンションの坪単価は毎年4万円ずつ減少すると言われています。今回の例では、築20年まで毎年4万円減少し、それ以降は毎年1万円減少していくものとします。
ちなみにこの物件の坪単価は2000万円/16坪=125万円ということになります。
新築時の坪単価は125万円+80万円(4万円×20年)=205万円だっという想定です。
10年後(築30年目)の資産価値は?
- 住宅ローン残高:2,022万円
- 10年間のランニング費用:13,346,040円
- 毎月の費用:111,217円
- 坪単価:115万円
- 物件評価額:2,190万円(推定)
当初残高2,700万円から678万円減少
(76,217円+10,000円+15,000円)×12カ月×10年+12万円×10年
13,346,040円÷10年÷12カ月
125万円−1万×10年
115万円×16坪=1,840万円+リノベーション分350万円(50%)と仮定
この時点で売却すると手数料を含めてほぼトントンの収支になる想定です。
2年ごとの更新料を考えると月10万円の賃貸に住んでいたのとほぼ変わらない支出額だったという計算です。
20年後(築40年目)の資産価値は?
- 住宅ローン残高:1,273万円
- 10年間のランニング費用:13,746,040円
- 毎月の費用:114,550円
- 坪単価:105万円
- 物件評価額:1,680万円(推定)
当初残高2,700万円から1,427万円減少
(76,217円+10,000円+20,000円)×12カ月×10年+10万円×10年
13,746,040円÷10年÷12カ月
115万円−1万×10年
105万円×16坪=1,680万円+リノベーション分0円と仮定
築40年のマンションを売却するのはなかなか難しい可能性もありますが、この時点で売却した場合でもほぼトントンの収支は見込めそうです。
引き続き月10万円の賃貸に住んでいたのとほぼ変わらない支出額だっという計算になります。
30年後(築50年目)の資産価値は?
- 住宅ローン残高:445万円
- 10年間のランニング費用:14,346,040円
- 毎月の費用:119,550円
- 坪単価:95万円
- 物件評価額:1,520万円(参考)
当初残高2,700万円から2,255万円減少
(76,217円+10,000円+25,000円)×12カ月×10年+10万円×10年
14,346,040円÷10年÷12カ月
105万円−1万×10年
95万円×16坪=1,520万円+リノベーション分0円と仮定
さすがに築50年となると売却するのは難しいかもしれません。物件評価額は算出していますが、ほぼ0円と考えていただいたほうがよいかもしれません。
修繕積立の費用もじわりと値上がりし、管理費と合わせると月々35,000円の支払いです。50uで築50年となるとこのくらいは考えておいた方がよさそうです。
40年後(築60年目)の資産価値は?
- 住宅ローン残高:0万円
- 10年間のランニング費用:10,373,020円
- 毎月の費用:86,441円
- 坪単価:85万円
- 物件評価額:1,360万円(参考)
当初残高2,700万円
76,217円×60カ月+(10,000円+30,000円)×12カ月×10年+10万円×10年
10,373,020円÷10年÷12カ月
95万円−1万×10年
85万円×16坪=1,360万円+リノベーション0円と仮定
購入して40年後ということは、35歳で購入したとして75歳になっているということです。途中で住宅ローンも完済し、月々の費用負担はぐっと少なくなります。
築60年なので実質的な資産価値はほぼ0ですが、この頃から賃貸とのコスト差が広がっていくことになります。
さすがにこの年齢で賃貸に住み続けるのはかなり難しいことでしょう。中古マンションを買ってよかったとしみじみ実感しているに違いありません。
50年後(築70年目)の資産価値は?
- 住宅ローン残高:0万円
- 10年間のランニング費用:6,400,000円
- 毎月の費用:53,333円
- 坪単価:75万円
- 物件評価額:1,200万円(参考)
当初残高2,700万円
(10,0000円+35,000円)×12カ月×10年+10万円×10年
6,400,000円÷10年÷12カ月
85万円−1万×10年
75万円×16坪=1,200万円+リノベーション分0円と仮定
とうとう前人未到の築70年に到達しました。35歳で購入したとして85歳になっている計算です。ここまでくると修繕積立金の額もなかなかのものになっています。
1981年以降に建てられた新耐震基準適用物件であれば、築70年でも十分住めるだけの強度は有しているはずです。
ちなみに修繕積立金の額は管理組合の話し合いによって決まりますので、一概にこのくらいの金額ということは言えません。
管理組合の決議次第では、もう少し割安になる可能性もありますし、その代わりとして一時金を徴収される場合もあります。
60年後(築80年目)の資産価値は?
- 住宅ローン残高:0万円
- 10年間のランニング費用:7,000,000円
- 毎月の費用:58,333円
- 坪単価:65万円
- 物件評価額:1,040万円(参考)
当初残高2,700万円
(10,000円+40,000円)×12カ月×10年+10万円×10年
7,000,000円÷10年÷12カ月
75万円−1万×10年
65万円×16坪=1,040万円+リノベーション分0円と仮定
築80年まで本当にいけるのかは不明ですが、購入してから60年ということは既に95歳になっています。
この年齢で建て替え議論とかされても正直困ってしまいます。ここまで来たら是が非でもこのまま住み続けたいところです。
鉄筋コンクリートのマンションはメンテナンスさえすれば60年〜70年は住み続けることが可能と言われています。しかしそれ以降はどうなのか正確なところは誰も分かりません。
60年間のトータルコストは?
2700万リノベマンションのトータルコスト:65,211,140円
2700万円で購入したリノベーションマンションですが、住宅ローンの利息や管理費、修繕積立金などを合わせると2倍以上の費用がかかった計算です。単純にイニシャルコストが安いからと中古マンションをリノベーション購入することは長期的に見れば実はお得ではなかったということもあり得るかもしれません。今後リフォームマンションや新築マンションとのさらなる比較を通して一番お得な選択肢はどのマンションなのかを見てみることにしましょう。
毎月コストの推移
住宅ローンを払い終えた35年目以降から毎月のコスト負担がググッと小さくなっています。55uのマンションに5万円台で住めるのであれば賃貸よりお得と言えるかもしれません。注目いただきたいのは老後にさしかかったあたりからコスト負担が大きく下がっているという事実です。これがもし賃貸マンションであれば老後も同じ賃料を払い続けるわけですからぞっとします。もちろん安い賃貸に住み替えるという選択肢もあるのでしょうが、連帯保証人の問題や住み心地の低下などいろいろ乗り越えるべき問題はありそうです。そう考えると修繕積立で多少のコストアップはあるものの、賃貸の老後に比べれば安泰ということが言えるかもしれません。
評価額の推移
※購入から30年後(築50年)に売却できるかは不明のため参考表示としています
10年後(築30年)に売却した場合、売却手数料等を考えると若干のマイナスになることが想定されます。20年目(築40年)で売却に成功すればトントンの収支かややプラスで切り抜けられるかもしれません。しかし、築40年以降になるとなかなか売却も難しくなってきますので、出口戦略をどのように考えるのかは中古マンションを購入するうえで必須と言えそうです。ここでいう出口戦略とはどこで売るのか、貸すのか、もしくは最後まで住み続けるのかということを意味します。
リノベマンションに最後まで住み続けられるかは運次第
このように住宅ローンを返済し終わったとしても、修繕積立金が定期的に値上がりすることによって、晩年の住宅コストはそこそこかかってしまいます。
今回は築20年で購入し、築80年までの試算を行いましたが、実際ここまで住めるのかは運次第というところもあります。仮に築30年の物件を購入するとなると、築90年を想定しないといけなくなるので、その物件だけで人生を全うするのはなかなか難しいこととなるでしょう。
日本で最初に建てたれた築63年のマンションがようやく建て替えられるということが先日ニュースになっていました。もちろん新耐震基準以降のマンションであればそれよりもずっと長く住めるはずです。築70年、80年というのも50年後の未来ではそれほどめずらしくなくなっている可能性もあります。
しかし、できることならばそこまでリスクを取らなくてもいいようにできるだけ築浅のマンションを検討したいところです。築20年のマンションを購入すれば、10年後売却するという選択肢もあるわけですから、できるだけ人生の最後を見据えてうまく立ち回れるように戦略を練っておきましょう。
次回(築20年リフォームマンションの場合)は、中古でリフォームマンションを購入した場合について考えてみましょう。