ふるさと納税の確定申告について教えてください
「ふるさと納税」は、お金を自治体に寄附し寄附金額に応じて所得税や住民税が減税になる制度です。多くの自治体が寄附をしてくれた人に贈るお礼の品(返礼品)に、「ご当地もの」「おトクなもの」を取りそろえ人気を集めています。ふるさと納税の醍醐味は、減税をしながらこの返礼品をもらえる一石二鳥の楽しみにありますが、減税メリットを受けるためには確定申告が必要です。ここでは、ふるさと納税の仕組みや確定申告の仕方、確定申告が不要になる特例制度など、ふるさと納税のキーとなるポイントについてご説明します。
「ふるさと納税」の仕組み
ふるさと納税を申し込むには?
「ふるさと納税」を申し込む一番簡単な方法は、ふるさと納税を取り扱うふるさと納税サイト“を利用する方法です。ふるさと納税サイトなら、クレジットカードで支払いができるところが多く、寄附する自治体と寄附金額、返礼品を選んで、ネットショッピング感覚でふるさと納税ができます。
<代表的なふるさと納税サイト>
- 「ふるさとチョイス」:ふるさと納税対応自治体をほぼ網羅。
- 「さとふる」:老舗サイト。返礼品の口コミが充実。
- 「楽天ふるさと納税」:楽天スーパーポイントが貯まる・使えるサイト。
- 「ふるなび」:クレジットカード決済で寄付金額の1%分のAmazonギフト券がもらえます。
- 「ふるぽ」:ポイント制の自治体に特化したサイト。ポイントは有効期限内に返礼品に交換すればいいため、年末ぎりぎりに駆け込み寄附をしたいときに便利。
このほか、10を超えるふるさと納税サイトがサービスを競っています。サイト独自のポイント制度やサービスを行なっているサイトが多いため、自分に合ったおトクなサイトを利用しましょう。
ふるさと納税先の自治体について
「ふるさと納税」という名前のために誤解されやすいのですが、自分の出身地の自治体だけがふるさと納税の対象ではありません、また、「納税」ではなく自治体への寄附です。自分が自由に選んだ自治体に好きな金額の寄附を行うことができます。旅行で行って好きになった自治体でも、返礼品がゴージャスな自治体でもかまいません。さらに、自治体によっては、「子ども支援」「医療・福祉」「環境」「文化財保存」など、お金の使い道を指定した寄附ができるところがあります。なお、ふるさと納税で寄付を行う自治体の数、回数、金額に制限はありません。
税金上のメリットは?
ふるさと納税では、1月〜12月の1年で「寄附した金額合計−2,000円」が寄附金控除の対象となり、所得税と住民税から差し引かれ減税となります。ふるさと納税による減税額は次の3つの合計額です。
@ 所得税の減税額
=(ふるさと納税寄附金額合計−2,000円)× 所得税率(5%〜45%)
※ 減税の上限額:総所得金額等の40%
A 住民税の減税額(基本分)
=(ふるさと納税寄附金額合計−2,000円)× 10%
※ 減税の上限額:総所得金額等の30%
B 住民税の減税額(特例分)
=(ふるさと納税寄附金額合計−2,000円)×(100%−基本分10%−所得税率)
※ 減税の上限額:住民税所得割額の20%
@ABにはそれぞれ上限額があり、上限額を超えた金額は自己負担となります。そのため、@ABすべての上限額に達した場合は、それ以上ふるさと納税をしても減税効果はゼロです。したがって、ふるさと減税で寄附をする自治体数・回数・金額に制限はありませんが、所得に応じて「減税になる上限」は決まってきます。
ふるさと納税の確定申告の方法
ふるさと納税は確定申告にもともとあった「寄附金控除」の制度を利用したものです。この寄附金控除は、医療費控除などと同様、会社員の場合でも年末調整されないため、確定申告をすることになります。確定申告の手続きや方法は一般の確定申告と同じです。
ふるさと納税の確定申告に必要な書類
- 寄附した自治体から送られてくる「寄附金受領証明書」
- 源泉徴収票(給与所得、公的年金等がある場合)
- 「確定申告書A」または「確定申告書B」
「確定申告書A」は、所得が、給与所得、公的年金等・その他の雑所得、総合課税の配当所得、一時所得のみの場合に使用できます。「確定申告書B」は所得の種類にかかわらずどのケースにも対応した書式です。自分がどちらにあてはまるかわからない場合は、とりあえず「確定申告書B」を選べば間違いはありません。申告書書類は税務署で入手できるほか、税務署の公式サイトからダウンロードすることができます。
※そのほか、確定申告する内容に応じた必要な書類
確定申告の時期
1月〜12月までの1年分の確定申告は、翌年の2月16日〜3月15日の間に行います(暦上、土・日にあたる場合は翌営業日)。ただし、税金が戻ってくる還付申告の場合は、翌年1月1日から5年間申告可能です。
確定申告書類の提出方法
確定申告書類の提出方法は、持参、郵送、e-Tax(電子申告)の3通りあります
<持参>
- 税務署の窓口に提出、あるいは税務署が設置した時間外ポストに投函
時間外ポストの場合、税務署が閉まっている夜間や、土・日・祝日にも提出することができます。
<郵送>
- 税務署に郵送(申告期限の当日消印有効)
<e-Tax>
- 税務署の公式サイトから電子申告(e-Tax)
ただし、e-Taxの場合は、マイナンバーカード(※1)、暗証番号(電子証明書)、ICカードリーダライタを事前に準備する必要があります。なお、e-Taxの場合、領収書などの必要書類のほとんどが添付不要になりますが、必要書類は原則として5年(青色申告の場合は7年)保管しなくてはなりません。
(※1)マイナンバーカードとは、おもて面に顔写真、裏面にICチップが付いてマイナンバーが記載されたプラスチック製のカードです。「個人番号カード」とも呼ばれます。マイナンバー「通知カード」に同封されていた「個人番号カード交付申請書」などで別途申し込みが必要です。なお、電子証明書が有効期間内であれば「住民基本台帳カード」でもe-Taxを行うことができます。
確定申告書類の作成方法
確定申告書類の作成方法は以下のとおりですが、aの方法だと手書き・手計算のため煩雑で時間がかかります。一方、b, cの方法の場合は、必要事項をパソコンに入力していけばシステムが自動計算をしてくれて、提出書式や提出データを自動作成してくれるため、手間が省け非常に楽です。
<書面提出>
- 税務署指定の「確定申告書A」または「確定申告書B」第一表・第二表に記入して提出
- 税務署の公式サイト「確定申告書等作成コーナー」で、サイトの画面に必要事項を入力し、最後に自動作成される確定申告書式のPDFファイルを印刷して提出
<e-Tax>
- 税務署の公式サイト「確定申告書等作成コーナー」で、サイトの画面に必要事項を入力し、データをインターネットで送信。
自動作成される確定申告書式のPDFファイルは控えとして保管しておくと、あとで見直すときに便利です。
作成方法が@ABのどの方法であれ、税務署の手引きや説明書きにしたがって、先頭から順に該当する項目に必要事項を記入・入力していきます。ふるさと納税に関する部分は次の箇所です。
- 確定申告書第一表:「所得から差し引かれる金額」のなかにある「寄附金控除」欄
- 確定申告書第二表:「住民税(・事業税)に関する事項」のなかにある「寄附金税額控除」の「都道府県・市区町村分」欄
- 確定申告書第二表:「所得から差し引かれる金額に関する事項」のなかにある「寄附金控除」欄(「寄附先の所在地・名称」「寄附金」)
確定申告が不要になる「ワンストップ特例制度」とは?
「ワンストップ特例制度」とは一定の条件を満たしている場合、ふるさと納税先の自治体にワンストップ特例制度の申請書類を送っておけば確定申告が不要になる制度です。ただし、ふるさと納税の回数が多い場合は、確定申告をした方が一度で手続きがすむため、楽になることがあります。
ワンストップ特例制度では、ふるさと納税先の自治体から、寄附者が住む市区町村に必要な情報が提供され、所得税減税分も住民税減税分もまとめて住民税から引かれます。
ワンストップ特例制度のための条件
- ふるさと納税以外の目的で確定申告をする必要がない人
- 1年間にふるさと納税をした自治体の数が5つまでの人
(同一自治体に複数回寄附をした場合「1自治体」としてカウントされます。)
ワンストップ特例制度の申請方法
@ 特例申請書(「市町村税・道府県民税 寄附金税額控除に係る申告特例申請書」)に記入
- 特例申請書は、自治体から郵送される「寄附金受領証明書」に同封されていますが、ふるさと納税サイトからもダウンロードできます。
※ 特例申請書は寄附をした件数分、申請用紙が必要です。同一の自治体に複数回寄附をした場合でも、回数分の枚数の申請用紙を用意しなくてはなりません。
A マイナンバーを確認できる書類と本人を確認できる書類を用意。
マイナンバー確認書類と本人確認書類の組み合わせには以下の3パターンがあります。
マイナンバー確認書類 | 本人確認書類 | |
Aパターン | マイナンバーカード(裏面)のコピー | マイナンバーカード(表面)のコピー |
Bパターン |
いずれか1点
|
いずれか1点
|
Cパターン |
いずれか1点
|
いずれか2点
|
※マイナンバー確認書類と本人確認書類は、寄附をした件数分必要です。同一の自治体に複数回寄附をした場合でも、マイナンバー確認書類と本人確認書類は寄附をした回数分の枚数を用意しなくてはなりません。
B @Aを一緒にふるさと納税先の自治体に送付
- 申請期限:ふるさと納税をした翌年の1月10日まで(不備のない状態で必着)
※申請期限に間に合わなかった場合は、確定申告をする飛鳥があります。
- 同一の自治体に複数回寄附した場合、複数回分の書類をまとめて送付可能。
- ふるさと納税の回数や時期によっては、確定申告をした方が手続きが楽になる場合があります。
まとめ
ふるさと納税は減税しながら返礼品がもらえるおトクな制度です。確定申告をする必要がありますが、医療費控除の申請など、ほかに確定申告をする用事がある場合は、ふるさと納税にかかる追加の手間はほとんどありません。確定申告が不要な会社員の場合は、確定申告の代わりにワンストップ特例制度も利用できます。ちょっとした手続きで、減税になり返礼品をもらえる「ふるさと納税」をもっと活用しましょう。